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一等地に古い公衆トイレ 八丁堀交差点近く、なぜ残る?【こちら編集局です】

2022/1/11 23:18
広島市中区の八丁堀交差点近くにある公衆トイレ。古く、男女共用で薄暗い(撮影・安部慶彦)

広島市中区の八丁堀交差点近くにある公衆トイレ。古く、男女共用で薄暗い(撮影・安部慶彦)

 「広島市中区の八丁堀交差点近くにある、古い公衆トイレが気になります。撤去しないのでしょうか」。広島市東区の主婦(44)からこんな声が編集局にLINE(ライン)で寄せられた。薄暗く、男女共用の和式スタイル。広島の一等地に残る背景を探り、公衆トイレの在り方を考えた。

 ▽他自治体では改善の動き

 買い物客や会社員たちが行き交う八丁堀交差点。公衆トイレは、その北西にぽつんと立つ。中には男性用小便器が3器、個室が2室あり、かなり古い。

 薄暗く、これまで使ったことがなかった。勇気を出して入ってみると…。あっ、紙がない。荷物を置く場所もない。外に音が漏れそうで恥ずかしい。結局、諦めて近くのデパートへ走った。

 戻ってみると、トイレに人影が。出てきた男性(52)は「出勤前の日課」という。さらに近くの駐車場に立っていた男性警備員(69)も「たまに使いますよ。トイレの場所を聞かれたら一応勧める。女性はまず嫌がるけどね」と苦笑いした。

 管理する市業務第2課によると、このトイレは1958年8月、幟町地区社会福祉協議会や近隣住民から嘆願書が出されたのを受け、市が翌年5月に設置した。81年、隣接する中国銀行のビル改築に合わせ、大規模改修されている。

 それから40年―。同課の小田明生課長は「存廃を巡る強い要望もなく、特に議論もしていない。今は改修の予定もない」と話す。

 ただ市の退職者たちによると、6、7年前に市はこのトイレを存続させるかどうか議論を深めるため実態調査をしたという。当時は大規模改修も考え、利用者数などを数えたらしい。しかしその調査結果は現在、担当課に残されておらず、詳細は分からなかった。「酔客らが一定に利用しており、あの場に残す結論となったのだろう」と小田課長は推測する。

 確かに、飲み会の帰りなどに繁華街に公衆トイレがあれば便利かもしれない。ただ多くの市民や観光客には、古くて使い勝手が悪そう。このままでいいのだろうか。

 他自治体では、公衆トイレの改善に力を入れる動きが広がる。東京都渋谷区では2017年度から、日本財団(東京)と連携。安藤忠雄氏たち著名な建築家やデザイナーが参加し、トイレを改修した。同財団は「暗い、怖い、汚い、臭い。公衆トイレの4Kのイメージ脱却を全国の自治体に広げたかった」とする。地元では「街全体の価値が上がった」など評価の声があるという。県内でも廿日市市などが、外国人観光客の受け入れを進めるためトイレの改善に取り組んでいる。

 八丁堀地区で市は、民間の再開発を後押ししている。市の都市計画づくりにも関わる広島修道大の木原一郎准教授(エリアマネジメント)は「暗く、立ち寄りがたい公共空間は一番あってはならない。まず公共空間から変わり、民間の再開発の先導役になってほしい」と求めている。(加納亜弥)

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