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証言400時間、10年かけ編集 大和ミュージアムの戸高館長、「海軍反省会」で菊池寛賞受賞

2019/11/29 20:04
「海軍反省会」全11巻を前に、編集作業を振り返る戸高さん

「海軍反省会」全11巻を前に、編集作業を振り返る戸高さん

 「こんな地味な仕事に、きちんと目配りいただいたことがうれしい」。大和ミュージアム(呉市)の館長戸高一成さん(71)は、全11巻に及ぶ元海軍将校らの証言録「海軍反省会」の編者として、出版したPHP研究所と共に本年度の菊池寛賞を受賞。12月に東京である贈呈式に臨む。

 海軍反省会は、戦後35年がたった1980年から、旧日本海軍で主に大佐、中佐クラスだった人物が定期的に集まり、太平洋戦争での敗戦に至った組織の課題などを研究した会合を指す。91年にかけて130回余りが開かれた。

 戸高さんは80年当時、財団法人史料調査会(東京)の主任司書。上司でもあった反省会幹事の土肥一夫氏(元中佐)の頼みで前半の約5年間、資料の準備などを手伝った。遠慮のない発言を促そうと、反省会は「主要な発言者が存命中は記録を公表しない取り決めだった」。録音テープを預かったのが戸高さんだった。

 後に、別の関係者が保管しているのが「奇跡的に見つかった」後半のテープを含め、録音は全体で約400時間。2009年、NHKが特集番組にして放映したのが弾みとなり、証言録の刊行が始まった。

 肉声をそのまま書き起こした膨大な記録は、出席者の人柄、感情の揺れも映し出す。「例えば手記に『大変残念であった』と書かれたシーンが、反省会では『もう悔しくってね、泣いちゃったんだよ』になる」。人物が見えてくることで「関連文献を深く読み込む助けにもなる」と語る。

 海軍のエリートたちの弱点も浮かぶ。「科学的素養に優れるが、数値を頼りに戦いに臨む。相手の指揮官の性格をよく分析する米軍との違い」。追い詰められると精神主義に傾き、「特攻作戦を止められなかった」。

 テープ起こしには深夜、独りでこつこつと励んだ。「誰の声か判別できるのは、今となっては私だけ。1年に1冊が精いっぱいだった」。それでも、「これだけは語り残したいという熱意」に満ちた出席者の顔を思い浮かべ、約10年がかりで成し遂げた。

 労作には、研究者ではなく司書として歩みを始めた自負も宿る。「あくまでニュートラルに、解釈ではなく記録を後世に手渡す」。眠っていた記録を起き上がらせてみせた。(道面雅量)


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