文化・芸能
「二紀展」際立つ個性 広島で絵画・彫刻126点
第73回二紀展が28日、広島市中区の広島県立美術館県民ギャラリーで始まった。昨年10月の本展(東京・国立新美術館)からの巡回作と地元作家の作品を合わせた絵画116点、彫刻10点。個性際立つ佳品がそろう。
広島に加え、山口、山陰、愛媛の各支部も地元として加わっている。絵画の部で、会員の浜田良徳(米子市)「刻(とき)」が、元理事長の名を冠した田村賞を受けた。無数の点描と削り痕のような線が、見る者をどこか遠い時空へといざなう。
委員では、広島支部長の福長弘志(広島市)が「墟」で黒の世界を深化させている。同支部顧問の難波平人(東広島市)は「ビルカット・アルムーズ村(オマーン)」。遺跡の町で得た心象を光と影のコントラストで見事に表現した。内田雅三(廿日市市)「青翳(せいえい)」は多彩なブルーが織りなす画面に情感が宿る。
会員の高地秀明(福山市)「窓辺の風」はアンモナイトや石彫、植物をコラージュし、時の流れをこま送りのように見せる。難波英子(東広島市)「サラバンドA」、平井章三(福山市)「生」はそれぞれのテーマを追いつつ配色を究めている。
準会員で一場洋次郎(三次市)「蒸気機関車I」は、モチーフの輪郭には画布の素地を残しながら、塗り重ねた厚みのある色面が鮮やか。在りし日の輝きを思わせる。
藤枝泉(愛媛県西条市)「我思う ゆえに」は鉛筆画だ。連なる人の顔は煙のようにも雲のようにも見え、想像力をかき立てる。池田睦代(尾道市)「消された記憶」は10年以上通う大久野島の廃屋。旧陸軍の毒ガス製造工場があり、かつては地図からも消された島。負の歴史を忘れまいとの強い意志が伝わる。いずれも準会員に推された。
彫刻では小島賞を受けた周藤豊治(松江市)らが巡回展用に小作品を披露。会場にアクセントを与える。
「新たな価値を目指し、創造的な個性の発現を尊重する」との二紀会の主張通り、濃密な作品が多く、見る者を飽きさせない。
二紀会と中国新聞社の主催で2月2日まで。=敬称略 (森田裕美)
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