文化・芸能

【灯を消さない コロナ禍と文化】ライブハウスに再び活気を 広島県内、休業耐え再開

2020/5/29 23:11
「Live space Reed」では、床にロープを張って観客同士の間隔を確認した

「Live space Reed」では、床にロープを張って観客同士の間隔を確認した

 ▽3密回避と経営 模索続く

 新型コロナウイルスの影響で3月から休業を余儀なくされた広島県内のライブハウス。22日に県の休業要請が解除され、約3カ月ぶりに営業再開へ動きだした。しかし県が示した営業再開の指針では、3密回避のため観客同士の距離の確保などの対策が求められる。無収入のまま賃料や経費を負担し続け、休業期間を耐えてきたライブハウス関係者は生き残り策を模索している。

 「再開するといっても、すぐにはお客は戻ってこない」。広島市中区の「ライブジューク」の新田佳則代表(64)はため息をつく。3月半ばから休業状態になって2カ月半。予約がびっしりと書き込まれたカレンダーは6月も連日キャンセルのバツ印が並ぶ。ライブハウスの休業要請は解除されたが、公演予定は1件も入らないままだ。

 ■賃料月100万円超

 ジュークはビルの19階にある。夜景と音楽を楽しめる好立地で、併設する音楽教室なども合わせ賃料は月100万円を超える。人件費や機材のリース料などを含めると月の出費は300万円近い。当面の運転資金として、3月に日本政策金融公庫の実質無利子の融資制度を申請し、500万〜600万円を借りた。長引く休業で無収入が続き、今月には国の持続化給付金200万円に加え、民間の金融機関にも融資を申し込んだ。

 いつになれば以前のような活気を取り戻せるか、見通しが立たない。「じっと止まっていたら、うちの存在を忘れられてしまいそう」と新田さん。ジャズやシャンソンの無観客演奏を週1、2回、動画投稿サイト「ユーチューブ」で生配信する取り組みを始めた。

 ライブハウスの営業再開に向けた県の指針は、来場者情報の記録をはじめ、利用者の飲食の自粛、前後左右に1メートル以上の間隔を空けて客席を設けるなど、約30項目に上る。

 ■県の指針に困惑

 福山市のライブハウス「INN―OVATION(イン・オベーション)」を経営する井上晃さん(42)は、この指針に困惑している。観客の間隔を確保すれば、入場できるのは定員120人に対し20人に限られる。収入の多くを占めるドリンク類は利用者の自粛を求められている。「指示通りにすると、経営が成り立たない。どう努力すればよいのか」

 広島市中区の「Live space Reed(ライブ・スペース・リード)」では、収容人数は定員の5分の1の70人になる。オーナーの田地井康裕さん(48)は「動員が少なくなればミュージシャンの出演意欲に影響する。納得してもらえる形を見つけなければ」と出演者との協議を試みる。

 尾道市のライブハウス「尾道BxB(ビービー)」は、マスク千枚とフェースシールド50枚を購入。店内に次亜塩素酸水対応の加湿器を設置した。6月7日に地元3バンドのライブの予定が入っている。当日は県内からの観客のみで25人に制限する上、ライブ中は観客、出演者、スタッフにマスクとフェースシールドの着用を求める。飲み物は缶とペットボトルに限って提供するなど安全対策を徹底する。

 オーナーの今谷修司さん(39)は「ライブハウスが消えてしまえば、アーティストが活動の場を失う。ひいては音楽文化の衰退につながる」。ミュージシャンのモチベーションを維持するためにも、可能な限りの対策を講じるという。

 ▽Tシャツ販売やライブ無料配信 22店タッグ、新プロジェクト

 広島県内22のライブハウスが困難を乗り切ろうと協力し、新たなプロジェクトが動いている。

 「5Hプロジェクト」と銘打ち、22のライブハウスのロゴが入ったTシャツを販売。白と黒の2種類で各2500円。各ライブハウスのホームページ(HP)を通じ、31日午後3時まで購入を受け付ける。収益は各ライブハウスが受け取る。

 31日午後3時からは「配信LIVEサーキット」と題した無観客ライブをネットで無料配信する。八つのライブハウスが参加し、12組以上のアーティストが出演する。「5Hプロジェクト」のHPから観賞できる。(里田明美、鈴中直美) 


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  • 6月のカレンダーを開くライブジュークの新田さん。公演のキャンセルを示すバツ印が並ぶ

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