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「幸せ」の正体、四つの力とは 幸福学研究の第一人者・慶応大大学院前野隆司教授に聞く

2021/3/1 7:56
前野隆司教授

前野隆司教授

 変化の大きいウィズコロナ時代に必要なのは、小さくても確かな幸せに目を向けることだろう。モノやカネに頼らない、持続可能な幸福感をいかに手に入れていくかだ。今回は、幸福学という学問からそれに迫ってみる。広島にゆかりがあり、幸福学研究の第一人者として知られる慶応大大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授(59)に、幸せになる方法を教えてもらった。(聞き手は久行大輝)

 【自己チェック】幸せになる「四つの力」


 ▽四つの因子を積み重ねて

 幸せはよく、気の持ちようといわれます。脳科学や心理学が発達していなかった時代は、それは単なる根性論に過ぎなかった。しかし近年は、学術的な根拠に基づき考え方や生き方を変えていくことで幸福を目指せることが分かってきました。幸福学とは、気の持ちようを科学的に理解したりコントロールしたりする学問なのです。

 幸せは英語でハッピーと訳すことが多いですが、ウェルビーイングと訳した方がふさわしい。「長期的な良い状態」という意味を含む概念です。一過性ではなく、しみじみと長くかみしめることができる幸せをどう手に入れていくかです。

 ▽お金や地位だけでは・・・

 お金や社会的地位だけでは幸福感は長続きしません。これらの物質的な「地位財」は他人との比較によって生じるもの。収入が増えたり出世したりしたときに感じる幸福感は短期的なものです。これに対し健康、家族、趣味などといった「非地位財」は、誰かと比べて得るものではない財。これらは長続きすることが知られています。

 幸福学では、この目には見えにくい非地位財の正体を明らかにしました。私たちに幸せを運んでくれる心的要因は四つ。(1)やってみよう因子(2)ありがとう因子(3)何とかなる因子(4)ありのままに因子―です。

 (1)やってみよう因子がある人は自己実現を目指し、成長しようと頑張っている人。主体的にわくわくしながら頑張っている人は幸福度が高いのです。

 (2)ありがとう因子は、つながりと感謝から生まれるもの。人とのつながりを実感すると、何ともいえない幸福感に包まれます。

 (3)何とかなる因子は、前向きさと楽観性が鍵となります。細かいことを気にせず、失敗を恐れずにチャレンジできる人です。

 (4)ありのままに因子は、人の目ばかり気にするのではなく自分らしく生きている人。自分の軸を持ち、それに従い行動する人です。

 これらの四つの因子を併せ持つために、私たちはちょっとした心掛けを積み重ねていく必要があります。

 まずは自分の中の小さな強みを見つけて「やってみよう因子」を刺激してみましょう。小さなチャレンジも日常に変化をもたらしてくれます。月1回、ボランティアしたら収入が倍になるのと同じぐらいに幸せ感が増すという論文があります。口角を上げたり笑ったりすれば幸せ感が高まるという研究結果もあります。

 人とのつながりが「ありがとう因子」を育んでくれます。でも強いつながりでなくてもいい。立ち話をする程度の弱いつながりでいいのです。そういう人が広くたくさん周りにいた方が、幸せ度は高いのです。

 いろいろな人間関係は新たな刺激をもたらしてくれます。多様な考え方に触れることで「私は私、人は人」と楽観的にもなれる。小さなチャレンジをきっかけに、幸せの因子が相乗的に育まれていきます。

 夢も大きすぎない方が幸せ。一番良いものを追い求めてうまくいかない人より、そこそこで満足する人の方が幸せと考えられます。小さな目標をこつこつと一歩一歩刻める人は、結果として大きな山に登れていると思います。

 まえの・たかし 1962年山口市生まれ。幼少期から広島市や鳥取市で過ごす。修道高、東京工業大と進み、86〜95年にキヤノン勤務。ハーバード大客員教授、慶応大理工学部教授を経て、2008年から現職。


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