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環境変わる季節「つらい気持ち、言葉にして」 宗教学者・釈徹宗さんのメッセージ

2021/4/4 20:33
釈徹宗さん

釈徹宗さん

 コロナ禍で揺れた2020年、小中高生の自殺者は過去最多の499人に上った。何らかのストレスを抱えた子どもが7割を超えたとの調査結果もあり、不安な社会が幼い心身に及ぼす影響は計り知れない。新しい学年になり環境が大きく変わるこの時季、子どもたちに届けたい言葉とは―。宗教学者で僧侶の釈徹宗さん(59)にメッセージを寄せてもらった。(山田祐)

 ■子どもたちへ

 コロナ禍での2度目の春を迎えました。今もウイルスに関するニュースが流れない日はないし、収束がいつになるのか分かりません。きっとみんなも「コロナ疲れ」を感じているよね。大人たちも変容した社会に右往左往して余裕がない。だから余計に、頑張らないとって思っている子は多いのではないかな。

 でもね、嫌なことやつらいことはどうか家族や友人や先生に話してほしいんです。相談機関にアクセスするのもいい。自分一人の胸にしまい込んでいると、それは不安と相まってどんどん大きくなってしまいます。すると心が萎縮して固くなって身動きができなくなってしまう。だから気持ちを言語化して、できるだけ吐き出してほしい。ついつい固くなりがちな心を、少しでも柔らかくしておくことが大切なんです。

 物事の正解は一つではありません。心を柔らかくするために、いろんな捉え方、考え方に触れる機会を持ってほしいと思います。学校に行けなくても方法はあります。たとえば読書。読み継がれてきた名作や植物、昆虫などの図鑑でもいい。いろんな気付きがいっぱいあるはずです。先人からの手紙を受け取るつもりで本のページをめくってほしいのです。

 ラジオから流れる人の語りに耳を傾けるのもお勧めです。みんなはテレビやネットなど映像で情報を取り入れることが多いと思うけれど、人の声がもたらす情報は心に直接届くものです。今までになかった発見があるかもしれません。

 仏教では「過去を追うな。未来を願うな」と説きます。それは「今日一日を精いっぱい乗り切ることだけを考えよう」ということでもあります。嫌なことがあっても、とにかく目の前のハードルを跳ぶことだけに集中しましょう。必ず良い方向へと進んでいきますから。

 ■保護者の方へ

 仏教の教えでは、わが子だからといって決して思い通りにはならないと考えます。自分自身の心と体でさえも思い通りにはならない。ましてやわが子が思い通りになるはずがないと。

 「こうあるべきだ」との思い込みが強いほど保護者も苦しみます。まずは子どもは思い通りにならないという前提で、手伝えることは何だろう、という態度で考えてほしい。子育てでは「待つ」と「許す」がキーワードです。

 子どもにばかりに注いでいたまなざしを少し周りに向けて、視野を広げてみましょう。保護者自身が学ぶ姿勢を持って、地域のいろいろなコミュニティーに関わってほしいと思います。

 あちこちに顔を出すことで新しい発見があります。いろんな人と接し、多様な物の見方や考え方に触れることで、もしかしたら自身の「偏り」に気付くかもしれない。そこで得た知識や人脈が、子育てに生かせることもあるでしょう。

 何より、保護者自身がきっと救われるし、柔らかい態度で子どもに向き合える。コミュニケーションの力も付いて、子どもとうまく意思疎通が図れるようになるかもしれません。 

 しゃく・てっしゅう 1961年大阪府生まれ。大阪府立大大学院人間文化研究科の博士課程を修了後、浄土真宗本願寺派如来寺(大阪府池田市)の住職となる。兵庫大生涯福祉学部教授などを経て、現在は相愛大副学長兼人文学部教授。子どもたちとの対話形式で仏教の教えを紹介する「教えて、釈先生! 子どものための仏教入門」(共著)などがある。

 ▽小中高生自殺、最多499人 コロナ禍の20年

 統計が残る1980年以降では最多となった。2020年に自ら命を絶った小中高生は499人(厚生労働省のまとめ)。前年よりも25%増で、コロナ禍による長期休校が明けた6月と、夏休みが明けた8月に急増している。

 同省自殺対策推進室は、休校が長く続いた影響で学業や進路に悩みを抱える子どもが増えたとみる。さらに、家で過ごす時間が増えたことによる家庭不和も原因の一つと考える。

 国立成育医療研究センター(東京)は昨年、コロナ禍での子どもたちの健康状態を4回にわたって調査した。小中高生の自殺者が急増した昨年6月から7月にかけて実施したアンケートでは、何らかのストレスを抱える子どもは72%に上った。さらに同11〜12月の最新の調査では、小学4〜6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%が中等度以上のうつ症状を訴えた。


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  • グラフィック・末永朋子

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