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「世界で最も田舎にある出版社」創業3年、養老孟司さんの本刊行 広島県北広島町のぞうさん出版

2021/9/21 20:33
神奈川・箱根にある養老さん(左)の別荘で打ち合わせをする植田さん=2020年2月(植田さん提供)

神奈川・箱根にある養老さん(左)の別荘で打ち合わせをする植田さん=2020年2月(植田さん提供)

 東京大名誉教授で解剖学者の養老孟司さん(83)が新刊「養老先生のさかさま人間学」を刊行した。出版元になったのは広島県北広島町にある「ぞうさん出版」だ。地域に根を張った出版活動に養老さんが賛同し、過去に新聞連載した原稿を寄せた。創業3年の同社は「田舎から社会に響く一冊を届けたい」と奮闘している。

 ぞうさん出版は、10年前に東京から同町芸北地区に移住した植田紘栄志(ひさし)さん(50)が2018年に設立した。「ミチコーポレーションぞうさん出版事業部」が正式名称で、「世界で最も田舎にある出版社」をうたう。植田さんは出版第1弾の自伝的小説「冒険起業家 ゾウのウンチが世界を変える。」を刊行した際、通信社記者を介し養老さんと知り合った。

 ▽「参勤交代」実践

 「田舎で出版社をつくって頑張っている。植田さんのように情熱を持ってやっている人は少ないから手伝いたい、応援したいと思ってね」と養老さん。趣味の虫捕りで芸北地区を訪れるなど植田さんと親交を深め、昨年9月にぞうさん出版の顧問を無報酬で引き受けた。そして今年6月に新刊「養老先生の―」が生まれた。

 養老さんは、意識優先の現代人が身体感覚を取り戻すため、都会から田舎へ定期的に行き来するべきだとする「参勤交代論」を提唱してきた。「もともと地方振興に関心があって20年余り前から言い続けていた」。月に1度は営業活動で上京する植田さんについて、「まさに逆参勤交代を実践している」と話す。「僕は東京は苦手。疲れる。顧問になれば広島に行く機会も増え、私も参勤交代を試せる」と笑う。

 ▽好調 4刷2万部

 「養老先生の―」は、社会や物事を思い込みにとらわれず観察すること、考えることの大切さを易しく説いた一冊だ。あらゆる世代に読んでほしいとイラストもふんだんに盛り込み、発売3カ月で4刷2万部と好調だ。

 東京や大阪など大都市が中心となっている出版業界。植田さんはこれまで、広島市のまちづくりに取り組んだ亡き友の著書や同市郊外での果樹栽培の体験記など計4冊を出版してきた。良き相談相手であり、メディアでのPRも積極的に担ってくれる養老さんは心強い存在だ。植田さんは「田舎での起業は厳しい面も多いが、面白がってくれる人もいる。田舎の魅力を通じて社会の在り方や心の持ち方を見つめ直すことのできる本を地道に出していきたい」と力を込める。(鈴中直美)


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  • 「養老先生のさかさま人間学」

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