認知症からの贈り物 信友直子

　くらし面で１年５カ月にわたって連載した「認知症からの贈り物」。映画監督の信友直子さん（５９）が、母の故文子（ふみこ）さんの認知症や...

　母が旅立って１年２カ月がたちました。...

　母の具合が一気に悪くなったのは去年の４月。新型コロナウイルスで仕事が中止になった私が、呉に戻ってしばらくしてからでした。...

　母の２度目の脳梗塞は、１度目と反対側の脳に起きました。そのため、それまで動かせていた右手足もまひ。リハビリはもう諦めざるを得なくな...

　脳梗塞で入院した母は、家に帰りたい一心で、懸命にリハビリを始めました。まひした左半身を使わずに動く訓練です。言語中枢はダメージを受...

　２０１８年９月３０日、夜１０時―。東京の私の元に、父から電話がかかってきました。...

　認知症の家族を持つ方からよく聞かれます。「お母さんを施設に預けることは考えなかったのですか？」...

　「そがいに死にたいなら死ね！」　父が母に声を荒らげた場面を思い返すたび、粛然とした思いになります。はたして私は認知症の母と、これほ...

　映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」を見てくださった方は、父が母に声を荒らげた場面に驚かれたと思います。日頃の穏やかな父か...

　認知症になった母を「努力しなければ愛せなくなった」と感じた私。でも同時に思ったのです。ならば努力をすればいい。形からでもいいから、...

　もはや認めざるを得ません。母が認知症になってから、私は努力しないと母を愛せなくなりました。取り乱し泣き叫ぶ姿を見ていると、大好きな...

　認知症になって、母の言動はどんどん子どもじみていきました。気に入らないことがあるとすぐにかんしゃくを起こす。父と私の会話についてこ...

　ここまで、母がいかに愛情深くすてきな人だったかを書いてきました。でもそろそろ、その続きを書かなければなりません。そう、変わっていっ...

　乳がんを発症するまで、私は寝食を忘れて番組制作の仕事に没頭していました。しかし病を得て、考えを改めました。一番怖いのはがんの再発や...

　４５歳の時の乳がん闘病は、母がいなかったらとても乗り切れなかったと思います。全治６カ月の骨盤骨折からやっと回復したのに、今度はがん...

　いつも私を自由にさせてくれて、遠くから見守っている母でしたが、いざ私がピンチに陥ると、一も二もなく駆け付けてくれました。４５歳で乳...

　母は、愛情たっぷりに育ててはくれましたが、生来さっぱりとした気性。子離れできないタイプではありませんでした。...

　先週書いた、母が勘違いで９歳の私にエッチな映画を見せた事件。それを読んだ父の反応が傑作だったので、今回はその話から。...

　母にはそそっかしいところもありました。これは今まで父にも内緒にしていた珍エピソードです。さすがにもう時効だと思うから、書いてもええ...

　私は小さい頃、ちょっと変わった子どもだったようです。一言で言うと、好奇心が服を着て歩いているような子。何にでも興味を示して「これは...