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【浄酎の挑戦】<下>目指すはSDGs 有機米と果実、自然守る味

2020/3/26
三角島でレモンを栽培する三宅社長(呉市)

三角島でレモンを栽培する三宅社長(呉市)

 日の光をたっぷり浴びたレモンが黄金色に輝いて見える。瀬戸内海の芸予諸島に浮かぶ呉市の離島、三角(みかど)島。人口20人ほどの小さな島に、新たな酒「浄酎」を企画する「ナオライ」は本社を置く。酒に香りを付けるレモンは、農薬や化学肥料を使わずに育てたもの。三宅紘一郎社長(36)が目指す酒造りは、「持続可能」がキーワードだ。

 スパークリングレモン酒「MIKADO LEMON」(750ミリリットル、6600円)が、その果実を使って2017年に完成した1作目。呉市の老舗酒蔵とタッグを組み、純米大吟醸酒をベースに醸した。飲むと、爽やかなレモンの酸味の後に、上品な日本酒の香りが追い掛けてくる。

 レモンは、南向きに面した三角島の畑約20アールで自社生産する。フェリー航路約1キロを挟んだ向かいの大崎下島(呉市)でも、久比地区の農家が果実を提供してくれる。

 三宅社長が農法を教わる大崎下島・久比のかんきつ農家、梶岡秀さん(72)は「農薬を散布する環境に自分が居たくないので、一切使わない。その方が食べる側も安心できる」と強調。「私たち人間は、必要以上に手を加えず、レモンが自らの力で育つサポートに徹するのみ」と信念を持つ。

 梶岡さんらとの出会いは、三宅社長の心を震わせた。人も自然も、誰も傷つかない酒造りを目指すナオライの理想像と一致するからだ。その理念は国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」とも通じる。人類の豊かさばかりを追求すると環境悪化が進むため、陸や海の豊かさを守ろうと世界に警鐘を鳴らす動きだ。

 純米酒からピュアなアルコールを抽出した新しい酒「浄酎」は、その原料にこだわる。タッグを組む酒蔵から余った酒をただ仕入れるだけじゃなく、有機米を蔵側に提供し、浄酎専用の純米酒を新たに造ってもらう試みを進める。

 いま買い付けているのは、浄酎を造る蔵がある広島県神石高原町にある「TANABE FARM」の有機こしひかりだ。「有機の里構想」を地域で打ち出す同社の田辺真三社長(49)は「酒蔵が有機米を買ってくれたら、農家の生産意欲が高まり仲間が増やせる」と力を込める。

 今後は全国で浄酎の製造拠点を増やし、各地の農家に有機米生産を促していく。こしひかりであれば、主食用米と同じなので農家が取り組みやすく、その広がりが期待できるという。三宅社長は「浄酎を作ることで、有機米を育て続けられる持続可能な循環を作り出したい」と語る。

 実際、神石高原町の有機田んぼの周りには、希少なゲンゴロウやタガメなどがすんでいる。「自然にも人にも優しい、素晴らしい里をもっと増やせるんじゃないか」と希望を抱く。

 三角島や久比では今、レモンの収穫作業が真っ盛り。その果実と浄酎をブレンドした香り豊かな酒が、新たに年内に誕生する。里山育ちの有機米と、潮風を浴びて実ったレモンのマリアージュ。それは「ミカドジマドリーム」の実現への大きな一歩になる。(桜井邦彦)

【浄酎の挑戦】
<上>酒蔵の再生 木だるで熟成、広島発製法


この記事の写真

  • 果実味と日本酒の風味が味わえるスパークリングレモン酒
  • 田辺社長が作った自慢の有機米。浄酎のもとになる純米酒の原料になる(広島県神石高原町)

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