エッヘン!産地ごはん
【あこがれ山暮らし〜北広島から 束元理恵】<1>雪解けの春
▽白い幼虫 食感やわらか
山間の集落に、谷からごうごうと水が流れる音が響いてきます。広島県北広島町の北にある奥原集落の雪解けの春。日が長くなり始めると胸がワクワクし、人も生き物たちも少しずつ自然の中で活動を始めます。
私も一匹の生き物として食べ物探しです。目当ては「テッポウムシ」とも呼ばれるカミキリムシの幼虫。楕円形をした頭の方が大きくて、逆三角形のような白く縮れた体が特徴です。幼い頃から虫採りが大好きで、小学生のときは友達から「虫キング」と呼ばれていた私にとって春の楽しみです。
カミキリムシを探すにはまず、山を歩きながら転がっている木を見つけます。中を少し崩すように掘ってみたり、木の皮を剥がしてみたりすると、森がぎゅっとつまったようないい香りがします。木の中に穴を開けてトンネルを掘った跡があれば、それが幼虫のいる目印です。
なかなか出合えないときもあるので、採った虫がある程度集まるまでは冷凍保存。1人暮らしの私は、10匹くらいたまったら料理を始めます。まずはジャガイモ、長ネギなど、家にある野菜を千切りにします。小麦粉を水で溶き、切った野菜と解凍しておいたカミキリムシの幼虫を入れて混ぜ、かき揚げにします。
サクサク、パリパリの中に、やわらかい幼虫の食感。木の中や実にすむカミキリムシの幼虫の味は、例えるとナッツのような感じでおいしい。
山の上では、人も虫も獣も、生き物たちみんなが一緒の思いで栄養を蓄え、寒い冬をじっと耐えたのでしょう。まだかまだかと待ちわびた春を迎えると、食べることは生きることにつながっていると実感させられます。
私は、虫はもちろん、自然の中で過ごすことが大好きです。それは、家族や仲間たちが自然の中での遊び方や食べ方などの楽しみを教えてくれたおかげです。
古里の広島県熊野町を離れ、北広島町に移住して4年目。この地で生きる人たちは私にいろいろなことを教えてくれます。私には何もかもが新鮮で、まるで幼い頃に戻ったようです。山の近くで採ったり食べたり、作ったり…。暮らしの中で感じるにおいや、豊かな里山の様子をお届けできればうれしいです。
つかもと・りえ 1994年、呉市生まれ。3歳から広島県熊野町で過ごす。幼稚園教諭、ゲストハウス職員などを経て、22歳の春、猟師にあこがれて北広島町に移り住んだ。
◇
「昆虫食ガール」「狩猟女子」と多彩な顔を持つ広島県北広島町の束元理恵さん(25)が、どっぷり溶け込んだ里山暮らしを毎週1回つづります。
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