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長期飼育ほど鶏はおいしい 岩崎さんの「ふぁーむbuffo」(広島県北広島町)【動画】

2020/5/10
広い鶏舎で自然の餌を与えて鶏を育てる岩崎さん(広島県北広島町)

広い鶏舎で自然の餌を与えて鶏を育てる岩崎さん(広島県北広島町)

 より味わい深い鶏肉を生産するため、長期飼育にこだわる女性養鶏家が中国山地にいる。広島県北広島町にある「ふぁーむbuffo」の岩崎奈穂さん(44)。健康志向から鶏肉の需要が伸びる中、短い期間で品質のそろった鶏を多く育てて出荷するのが業界の主流だが、「鶏は長く飼うほどおいしい」と、個性ある味の鶏を育てることに情熱を注ぐ。

 ▽日数3倍以上、餌も工夫

 北広島町の旧大朝町の山すそに、buffoの鶏舎8棟が並ぶ。「これが半年ほど育てた雌。肉は脂が乗ってきてますよ」と抱っこする岩崎さん。近くの自宅から通い、食肉用、卵用、ひな育成用の鶏舎を毎朝訪ね、餌を与えて回る。鶏たちは人に懐き、全く恐れない。

 広い鶏舎を自由に運動させる「平飼い」を、「180日前後」の長期にわたって行っているのがbuffoの特徴だ。50日間ほどの短期で出荷サイズまで成長させるブロイラーと比べると、育てる日数は3倍以上も長い。

 平飼いの養鶏家は、中国地方でもいるが、これだけの日数をかけて鶏を飼育するとコストがかかり、生産性も上がりにくいので珍しい。なぜ、長期飼育にこだわるのか。岩崎さんは「鶏は生後4カ月ごろから雌雄に特徴が出始める。味わいが違ってくるんです」と強調。筋肉質で体が大きい雄はジビエを思わせる肉質になる一方、雌は柔らかくて真っ黄色の脂が乗ってくるという。

 岩崎さんは古里で1999年に養鶏場を開き、肉用鶏の飼育は7年目。日本農林規格(JAS)で在来種38種の血を50%以上継ぐなどした鶏だけが名乗れる地鶏に加え、ブロイラー以外の他の種類も育ててきた。「家禽育種研究所」(広島市西区)の委託で、同研究所が広島大の研究室と共同研究する「広大鶏」も飼育している。

 農水省によると、2018年のブロイラーの処理量は約7億羽。20年前より1億羽以上増え、ここ2、3年の伸びが著しい。その理由に日本食鳥協会(東京)は「消費者の健康志向」を挙げる。一方、buffoのようなブロイラー以外の肉用鶏は、ブロイラーの1%に満たない。

 岩崎さんは餌も工夫している。くずの米や大豆、米ぬかに酒かすと多彩な食材をミキサーでブレンドして作る。季節によってカボチャやリンゴも与える。こうした硬い餌は、物をつつく鶏の本能を満たし、ストレスをためさせないという。

 岩崎さんは現在、広島市内の飲食店10軒ほどから注文を受け、食肉を直送している。18年からは、鶏をさばく自前の食鳥処理場を北広島町内に設け、血抜きや解体も自らこなす。

 取引店の一つ、広島市中区の和風創作料理店「快食ようすけ」は昨年12月のオープン以来、岩崎さんの鶏にこだわって肉料理を提供している。「かめばかむほど味が出る。塩だけのシンプルな味付けが一番です」と店主の丹井洋介さん(39)は魅力を語る。

 buffoは、イタリア語から「楽しい」「気楽」という意味で名付けたというが、後に知人が「buffoは滑稽なという意味だよ」と教えてくれた。「でも、1人で始めた時は変わり者って見られてたんで、あながち間違ってないからいいや」と笑う。

 鶏ふんを地域の農家に肥料として使ってもらい、取れた規格外の作物を餌として鶏に食べさせる循環型のスタイルも定着した。「どの鶏も奈穂さんの味になってるよ」と言われるのがうれしい。均一でなく個性的な鶏肉のファンを増やすため、今秋から一般向けにも食用鶏の販売をスタートする計画だ。(桜井邦彦)


この記事の写真

  • 北広島町の山裾に並ぶbuffoの鶏舎
  • 産みたての卵。餌によって黄身の色が変わる
  • さばいたbuffoの鶏。雌(上)は脂がよく乗り、雄は筋肉質で大きい

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