エッヘン!産地ごはん

アサリ、大粒で味が濃い 廿日市市の大野地域

2020/5/13
一粒の幅が5センチほどもある「大野あさり」

一粒の幅が5センチほどもある「大野あさり」

 波の向こうに宮島を望む廿日市市大野地域の下の浜。干潟の潮が引くと、くいで升目に仕切った「海の畑」が一面に広がる。砂を掘ると、幅4、5センチの立派なアサリがざくざく出てくる。

 この「大野あさり」は、大粒で味が濃い。地域ブランドを守るために国が設けた「GI」、地理的表示保護制度に登録された名産だ。宮島の山々と永慶寺川からの栄養豊富な水が混ざり合う大野瀬戸が育む。

 8・8ヘクタールの漁場を守る浜毛保(はまけぼ)漁協の山形昇組合長(76)は「水を加えて蒸すだけで最高の味になるんじゃけ」と胸を張る。ぷりっとした肉厚の身と、うま味が溶け出しただし。それを存分に味わうことができるのが「アサリの炊き込みご飯」だ。「わしらの旬のごちそうなんよ」と笑う。

 自慢の味は、長い歳月をかけて地域が守ってきたものでもある。養殖を始めた明治時代から、大野地域は干潟を細かく区割りし、各区の担当者が稚貝から育てた。まるで自分の庭のように手をかける。貝が呼吸できるよう砂を耕し、大きくなるまで世話を焼く。砂ごと吸い上げる機械ではなく熊手を使い、1粒1粒手掘りする。

 しかし、苦難に直面してきた。瀬戸内海のほかの産地と同じように、大野地域も埋め立てで干潟が減り、水質変化でアサリの生息が難しくなった。この10年はエイやチヌなどの食害にも苦しめられている。広島県内のアサリの漁獲量は80年代の2千トンから2018年の51トンに落ち込んだ。

 どうすれば産地を復活できるのか。福山市内海町の田島や尾道市でも、稚貝の保護や人工種苗の生産など工夫を凝らす。漁獲量が県内の8割を占める大野地域は、その復活を引っ張る存在だ。

 浜毛保漁協は干潟を150人の組合員で分ける。人数は組合を設立した70年前からほぼ変わらない。宮島が見える古里の海の風景を守りたい―。その思いが、脈々と受け継がれている。「次の世代に託すまでもうひと頑張りよ」。山形組合長は、両手いっぱいのアサリを見やる。(標葉知美)


この記事の写真

  • 宮島の対岸にある大野地域の干潟、区画が分けられ、畑のような風景が広がる(撮影・高橋洋史)

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