エッヘン!産地ごはん
生産者応援の輪、広島で広がる HP・情報誌で消費者とつなぐ
生産者の顔を紹介し、食材の価値を見直すよう促す取り組みが、広島で広がっている。野菜ソムリエや企業がホームページ(HP)や情報誌で、産地の思いを伝え、消費者とつなぐ仕掛けをつくる。安さ優先になりがちな大量生産の時代だが、身近に質の高い食材がある喜びを発信する。
▽むすぶ広島「いいものを労力に見合う価格で」
野菜ソムリエ上級プロの花井綾美さん(67)=広島市安佐南区=は5月、一般社団法人「むすぶ広島」を設立した。HPには、花井さんお薦めの農家の野菜や加工品を詰めた「野菜BOX」を並べ、作り手の連絡先も一緒に掲載している。
年間約10件ずつ生産者を増やし、「いいものを労力に見合う価格で売れる場にしたい」と話す。今後は「作る人」と「食べる人」が直接やりとりできるマルシェや交流会も開く。生産者、消費者や流通業者、飲食店が知り合える広島の「食のプラットホーム」を目指すという。
花井さんは、野菜ソムリエとして活動してきた12年で「収入が仕事量に見合わない」という中小農家の嘆きを何度も聞いた。「確かにその通り。ケーキ1個は500円で普通でも、自然素材の肥料にこだわったトマトは200円でも高い。おかしいでしょ」
いい食材を育てる人も求める人もいるのに、互いを知る場所がないことにも気付いた。ならば自分で作ろうと、自宅の土間でおいしいと感じた農家の野菜を売るようになった。どこで取れたかや調理法を話すとよく売れた。だが、1人で続けるには限界がある。生産者が自慢の食材をPRし、食に興味のある人とつながることのできるネットワークが欲しかった。
運営は会員からの会費で賄い、会員になると優先してイベントに参加できるなどの特典がある。広島信用金庫(中区)が活動費を助成するなど企業も後押しする。「広島の食材を未来に残すために力を集めたい」と意気込む。
▽ひろしま食べる通信「おいしさの裏に物語と哲学」
作り手の「物語」に着目して食材の良さを伝えるのは、印刷業中本本店(中区)が発行するタブロイド判情報誌「ひろしま食べる通信」だ。2カ月に1回、カラー16ページで広島県内の生産者を紹介。その人の食材とセットで定期購読者に届ける。
いい食材には、手間も時間もお金もかかる。見た目だけでは分からない栽培の過程や工夫を、長いときは1年かけて取材し、写真と記事で伝える。購読料は1部3300円。24号の5月は、広島県北広島町の四ツ葉農場を特集し、ニワトリを平飼いする養鶏家の自家製飼料の工夫や情熱を伝えた。卵4個と鶏胸肉、鶏もも肉各1枚も届けた。梶谷剛彦編集長(44)は「おいしさの裏にある物語と哲学を伝えたい」と語る。
ことし7月に4周年を迎える。発行部数は月350部にとどまるが、これまでの取材先からは「掲載後スーパーと取引が始まった」「毎年リピーターがある」との声が寄せられる。作り手と買い手の距離は、じわじわと近づいている。
同じような「食べる通信」は、ポケットマルシェ(岩手県)が統括し、全国26団体が発行。同社は、中小規模の農家や漁業者の通信販売のためのサイトも運営している。新型コロナウイルスの感染が広がり始めた2月以降、このサイトの登録会員は13万人以上増えた。
「外出自粛で、家で自分で作って食べる機会が増えたからか、食材を見つめ直す人が増えたのではないでしょうか」と梶谷編集長。「食卓と畑の距離が縮まって、地域の食が豊かになればうれしい」(標葉知美)
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