エッヘン!産地ごはん

「残念な魚たち」絶品の揚げ物に 呉の倉橋島「お宝フリット」【動画】

2020/7/15
鮮度のいいサメやボラに加え、民宿裏の畑で育てたモロッコ豆などの野菜も揚げて大皿に添える(つるや荘)

鮮度のいいサメやボラに加え、民宿裏の畑で育てたモロッコ豆などの野菜も揚げて大皿に添える(つるや荘)

 サメやエイ、ボラ…。食材として人気がない残念な魚たちが、呉市の倉橋島では「お宝フリット」という揚げ物に変身する。まとう衣は島内産ちりめんの粉を使い、磯の風味が香ばしい。バーガーやかき揚げなどアレンジが店ごとに進み、島ぐるみでご当地グルメを目指す。

 ▽ちりめんの衣 店ごとに多彩な進化

 倉橋島と橋でつながった南端の鹿島で、老舗の民宿つるや荘が提供するのは、サメやボラを分厚く切ったフリット。ふんわりと揚がった白身はあっさりしてくせがない分、ちりめんの香りの衣とよく合う。

 魚は、宿を経営する小平満さん(69)が網で捕ってきた。「刺し身や洗いで食べてもうまい」と誇る。さばいて揚げる妻直美さん(64)は「女性客に特に人気があります」とほほ笑む。

 未利用魚の活用は、過疎高齢化が進む島の観光振興にと、住民が発案した。島の人たちは食べている魚なのに、「臭い」などのイメージから食わず嫌いの人が増え、あまり流通していない。それを逆手に取り、「島に来ないと食べられないお宝料理」としてアピールする。

 イタリア語で「揚げ物」を指すフリットを提案したのは、東京・代官山のイタリア料理店「fal〓(ファロ)」の樫村仁尊シェフ(46)。かつて広島市内に勤めていた縁で、2年前の西日本豪雨で被災した倉橋島の支援にもつなげたいと、協力を名乗り出た。

 「ちりめん粉を天然のうまみ調味料として効かせました」と樫村シェフ。こだわり3カ条は地元の食材の活用、ちりめん衣、広島県産レモンの皮と果汁を使ったタルタルソース。これをもとに「各店のカラーを出して進化させてほしい」と期待する。

 この春には、地元の八つの飲食店や民宿がメニューに加えた。半年のうちに、各店では早くも新メニューが誕生している。

 その一つが洋風かき揚げ丼「フリットライス」。倉橋島南西部の総合マリンレジャー施設の一角にあるカフェ「Jul.beach cafe(ジュライ・ビーチ・カフェ)」が6月上旬、提供を始めた。伊藤征彦シェフ(42)は「オーシャンビューの店の雰囲気に合うよう、おしゃれな感じにしました」と話す。今後はパスタにも挑戦する。

 「インスタ映え」を意識し、ボラなどを1切れ100グラム以上に切り分け、フィッシュバーガーにしたのは桂浜そばの「cafe SLOW」。藤井文美店長(33)は「ボリューム感たっぷりで若い人に喜ばれます」と話す。

 未利用魚はサメやボラだけではない。消費者の魚離れで値が下がり、天然マダイやハマチでも市場に出さない場合がある。フリットの食材を店に提供する作田水産の作田隆次社長(39)は「売れない魚や逃がす魚、狙って捕らない魚も実はおいしい。フリットを通じ、魚を食べる文化が見直されるとうれしい」と願う。(文・桜井邦彦、写真・河合佑樹)

 【お断り】〓はоの上にアクサングラーヴがつきますが、JISコードにないため表示できません。


この記事の写真

  • ビッグサイズのフリットとレタスやカイワレなどを挟んだフィッシュバーガー(cafe SLOW)
  • フリットライスのかき揚げは、魚の切り身とシメジ、パプリカなどを合わせる(Jul.beach cafe)
  • シロザメ
  • ボラ

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

トピックスの最新記事
一覧