エッヘン!産地ごはん

島根県奥出雲のシイタケ、うま味と歯応えたっぷり 肉厚「山の幸」の作り手たちを訪ねる

2021/4/9
ほだ木に生えたシイタケを収穫する野津さん(島根県奥出雲町)

ほだ木に生えたシイタケを収穫する野津さん(島根県奥出雲町)

 ▽原木に加えハウス栽培も

 中国山地に抱かれた島根県奥出雲町はシイタケ栽培が盛んだ。かつて、たたら製鉄を支えた豊かな里山は天然の木を使う原木栽培に適し、春が深まる今が収穫のピーク。風土に根差したシイタケ作りの一方で、季節を問わず専用ハウスで育てるオリジナル品種も登場している。うま味と歯応えたっぷりの「山の幸」に磨きをかける作り手たちを訪ねた。

 木漏れ日が差し込む山林で、野津強さん(79)は原木で育てたシイタケの収穫に汗を流していた。ほだ木と呼ばれるクヌギやナラの丸太が並び、厚さ3センチほどもあるシイタケがあちこちに顔を出す。「この里山が肉厚のシイタケを育んでくれる。大切な財産よ」。野津さんが手を休めて一帯を見渡す。

 奥出雲は古くから、たたら製鉄で栄えてきた。山で砂鉄を取り、木々で作った木炭を燃料に膨大な鉄を生みだした。鉄作りが途絶えて使われなくなった木炭。それと代わるようにして戦後、ほだ木によるシイタケの栽培が盛んになったという。たたら製鉄の延長線上にある農の営みは、2019年に国の「日本農業遺産」にも認定された。

 野津さんは、ほだ木にシイタケ菌を植え付け、1年半余り山林に置いて育てている。冬場の積雪量が多い奥出雲の谷あいは湿度も高く、シイタケ栽培にうってつけの環境だ。

 収穫は春と秋の2回。取れたての生シイタケは、地元の産直市に出すとすぐに売り切れてしまう。一年を通して味わえるよう、大半は乾燥させて出荷し、だしや鍋物の具材として料理店の引き合いも多い。

 ただ、原木栽培は重労働で担い手が減っている。ほだ木を切り出し、野津さんが「自然とにらめっこ」と言うように、日光や風の当たり具合も見極めて育てないといけないからだ。その代わりに導入が進むのが菌床栽培。専用ハウスで温度や散水を管理して育成する方法で、30年前から全国で広まっている。

 有限会社の奥出雲椎茸(しいたけ)はその一つ。専用ハウスの棚に円筒型の菌床が列を作り、手のひらサイズのジャンボシイタケがにょきにょきと伸びている。出雲大社の神殿の名前にちなんで「雲太(うんた)」と名付け、7年前から生シイタケとして売り出す自慢の一品だ。

 一見、工場のよう。ところが、統括本部長の川西功徳(こうとく)さん(57)は「奥出雲らしい個性あふれるシイタケを追求している」と力を込める。シイタケ菌はオリジナルという。3年かけて千通り以上の菌を配合。栽培実験を重ね、寒暖差の激しい奥出雲の気候に合う独自品種の開発にこぎ着けた。菌床も地元材のおがくずや米ぬかで作る。使い終わったら田んぼの肥料になり、里山の資源循環に努めている。

 そうして育てたシイタケの売りは大きさだけではない。原木栽培と同じように肉厚で、みずみずしく、歯応えも楽しめる。年間600トンを生産。島根県の生シイタケ出荷量の3割余りを占め、奥出雲の新たな特産として注目されている。(田中謙太郎)

 ▽川西さん一推し、「雲太」のステーキ

 奥出雲椎茸の川西功徳さんの一推し料理は「雲太」のステーキだ。頬張ると、まるで脂身のない肉のようなぷりっとした食感と、口に広がるうま味を堪能できる。

 まず軸を切り落とし、かさのひだのある方をフライパンで軽く焼く。ひっくり返してさらに焼き、塩とこしょうを振りかける。ふたをして、ひだに水滴がにじみ出てきたら完成だ。うま味たっぷりの水滴もこぼさないように食べよう。

 軸も細切りにして、かき揚げにするとおいしいそうだ。

 ■Ippin帖でも買える

 ジャンボシイタケの雲太は「奥出雲椎茸オンラインショップ」で販売。21日付の中国新聞朝刊に折り込まれる「おとどけIppin帖(いっぴんちょう)」(一部地域は対象外)からも購入できます。


この記事の写真

  • 奥出雲椎茸の菌床栽培ハウスで、ジャンボシイタケを収穫する従業員(島根県奥出雲町)
  • ジャンボシイタケの雲太で作ったステーキ

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

トピックスの最新記事
一覧