学力アップなび

【第5回】その他の解答例と講評

2020/12/1 16:57

 「新聞で磨く小論文」への応募の中から、よく書けている解答を紹介します(学年、五十音順)。本紙編集委員たちが講評します。

【解答例】広島国際学院高2年 絹笠杏瑠さん(17)=広島市南区

 核兵器の開発から使用まで一切を全面禁止する核兵器禁止条約の批准数が、発効に必要な50ヵ国・地域に達しました。そのため、来年の1月に発効することが決まりました。しかし、米英仏ロ中の五大保有国は参加を拒否し、他の保有国も参加しないため、実効性が課題になりました。日本も安全保障上の理由から参加せず、被爆者を中心に国内で参加を求める声が高まっています。実効性を高めるためには批准国を増やすことが必要のため、米国は複数の国に批准撤回を要求しています。

 私は、この「核兵器禁止条約1月発効」という記事を読んで、核兵器の開発や使用を禁止することに賛成します。なぜなら、核兵器を持って戦争をすることで、私たちにメリットはないし、戦争はとてもおそろしいものだからです。そこで、私は核兵器禁止条約に参加しない保有国や日本に対して今自分に何ができるのかを考えました。

 私が核兵器廃絶の実現に向けてできることは、インターネットを使ってたくさんの人々へ核兵器のおそろしさについて伝えることです。具体的にどのようなことを話すかというと、今までに起きた戦争に使われた核兵器のおそろしさや危険性、被爆者の実体験などについて伝えることが良いと思います。私は広島で育ったので、小学校や中学校、高校で原爆についてたくさんのことを学びました。原爆や核兵器のおそろしさだったり、家族や友達が亡くなってしまった悲しさについて色々な話を聞きました。だから、私はこれらの話をより多くの人々に聞いてほしいです。

 私は、このようなことから、核兵器廃絶に向けて、インターネットで核兵器のおそろしさをたくさんの人々に伝えていきたいです。

【講評】

 原爆について学んできた経験から、核兵器の恐ろしさや危険性、被爆者の実体験についてインターネットで発信すると提案しました。なぜ核兵器がなくならないのか、また日本が核兵器廃絶条約を批准しない理由について考察を加えると、主張に説得力が出ました。

【解答例】広島工業大高1年 吉井湖春さん(16)=広島市西区

 核兵器の開発から使用まで一切を全面禁止する核兵器禁止条約の批准数が発効に必要な50カ国・地域に達し、来年1月22日に発効する。しかし、5大保有国やその他の保有国は参加しておらず、実効性が課題だ。米国の「核の傘」に頼り同盟関係を重視する日本は安全保障上の理由から参加せず、被爆者を中心に国内で参加を求める声が高まっている。

 保有国が核兵器禁止条約に参加しないのは、核兵器によって自国の強さを示しているからなのだろうか。確かに、核兵器を持っていると聞くだけで「怖い」「強い」と感じる。原子爆弾で街は焼け野原となり多くの人が死に、今でも多くの人が後遺症で苦しんでいるからだ。しかし、なぜ日本も核兵器禁止条約に参加しないのか。アメリカの核兵器に頼って同盟関係を結んでいるからなのか。私は理由がそれだけとは思えない。これらの理由はみんなを納得させるために言っているだけではないのかと感じる。なぜなら、アメリカは沖縄県や岩国に米軍基地を置いているが、日本が攻められた時に核兵器を使わず守ってくれるのか信じられないからだ。

 それでも、ただそう言って見ているだけでは何も変わらない。私は、広島で生まれ育った。そして、毎年原爆について学ぶ。しかし、広島で生まれていない私のいとこは原爆のことを全く知らなかった。だから私は、今できることとして、事実を知らない人たちに原爆の威力や、原爆が落とされた下で何があったのかを伝えていこうと思う。多くの人に知ってもらうことで核兵器廃絶の一歩を踏み出すことができるかもしれないからだ。

 毎日を怯えず幸せに暮らすことができるのも決して当たり前のことではない。他国では、生きるか死ぬかの瀬戸際の人が多くいる。その人たちが今の私たちのように幸せに暮らせるとき初めて世界平和と言えるのだと思う。私は平和に暮らせていることに感謝し、戦争の恐ろしさを伝えていきたい。

【講評】

 原爆がもたらす惨禍について知られていないと指摘し、原爆の威力や悲惨さを伝えていく考えを示したのは良かったです。ただ、日本が核兵器禁止条約に参加しない理由の説明が分かりにくく、結論を平和についての一般論でまとめたため、主張がぼやけてしまいました。

【解答例】松賀中3年 石川優音さん(15)=東広島市

 核兵器の開発から使用まで一切を全面禁止にする核兵器禁止条約の批准数が、発効に必要な五十か国・地域に達した。しかし、米英仏ロ中の五大保有国は参加を拒否、他の保有国イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮も参加していない。米国の「核の傘」に頼り同盟関係を重視する日本は安全保障上の理由から参加せず、被爆者を中心に国内で参加を求める声が高まっている。

 核兵器禁止条約に、日本が三年間参加を拒否し続けていることについて、私は参加するべきだと考える。

 確かに、核兵器禁止条約に参加することは日米安全保障条約に関わってくることかもしれない。しかし、日本は世界で数少ない被爆国の一つであるからこそ、核兵器禁止条約に参加し、核兵器の廃絶を訴えていくべきだと思う。なぜなら、多くの被爆していない人々は、被爆者が味わった「核兵器の恐ろしさ」や「苦しみ」を知らないからだ。日本国内でも広島県民や長崎県民以外の多くの国民は、日本が被爆国だということは知っていても、八月六日が何の日なのか知らないだろう。原子爆弾についても、社会の歴史の時間に学習したくらいだと思う。その状態では「核兵器の恐ろしさ」を知らない国民が増え、世界でも知らない人が増加するだろう。それでは、核兵器廃絶にさらに遠のいてしまう。

 よって私は、広島、長崎を中心に「核兵器の恐ろしさ」を全国に伝えて核兵器禁止条約への参加を促し、世界中に被爆者の「苦しみ」などを伝えていかなければならないと考える。そのために私は、広島で生まれ、広島で育った一人として、「核兵器の恐ろしさ」について深く考え、まずは身近な家族や友人と共有していきたい。

【講評】

 「被爆国」の表現ですが、核実験や原発事故によるヒバクシャが世界にいます。核禁条約の文脈なら特に、日本は「唯一の戦争被爆国」と明確化すべきです。3段落目が長いので「日本国内でも―」から段替えをしましょう。文字数が少ないのもカバーできます。被爆実態への理解不足、体験の風化の問題を指摘した点は良かったです。

【解答例】松賀中3年 古田佳怜さん(15)=東広島市

 核兵器の開発から使用までを全面禁止する核兵器禁止条約が来年一月二十二日に発効される。これにより、核兵器を非人道的で違法と断じる初の国際規範が生まれることになる。

 しかし、五大保有国をはじめとする他の保有国、同盟関係を重視する日本などは参加を拒否。実効性が課題である。世界で唯一原子爆弾を投下された国である日本。被爆者を中心に国内で参加を求める声が高まっているものの、安全保障上の理由から参加実現には至らなかった。

 なぜ世界から核兵器がなくならないのか。それは、核兵器によって戦争が起こるのを防いでいるからである。現在の社会は、核兵器の保有が、対立する二国間関係において互いに核兵器の使用が躊躇される状況を作り出して、戦争を回避し、平和を保っている。

 たしかに現在の世界の平和を守るためには核兵器は必要なのかもしれない。しかし、核の保有国が核を使用してしまったとき、本来対立とは無関係であった多くの人も犠牲になる。つまり、核兵器を保有している以上真の平和は生まれないのである。

 核兵器廃絶を実現させるためには、国同士の対立をなくしていかなければならない。対立する大きな理由は、他人の意見を受け入れず、考え方が異なるものを一方的に否定するからではないだろうか。他国への理解を深め尊重し合う異文化理解が今の世界に必要なのではないだろうか。

 そこで私は、被爆地である広島に住む者として原爆、核の恐ろしさを世界の人々に発信し、外国の考え方も学べるよう外国人との交流会やイベントに積極的に参加していきたいと考える。

 核兵器は今の世界の平和を守っているため、なくすことは容易ではない。しかし、これ以上犠牲者を出してはいけない。だからこそ、まずは一人一人が異文化理解を深め、核兵器廃絶のきっかけを作っていくべきであろう。

【講評】

 核抑止力に頼る国々の事情を読み解いた上で、核兵器が全人類に及ぼす危険を指摘。異文化理解の必要性と自ら行動する決意を表明しました。広い視野から、身近な課題へと流れる小論文の「遠近法」が秀でています。ただ、核兵器は「戦争を回避」する要因になっていますが、「平和を守る」というのは言い過ぎた表現ではないでしょうか。

【解答例】鷹取中3年 矢冨綾乃さん(15)=福山市

 十月二十四日、核兵器禁止条約発効のために必要な批准数が五十の国と地域に達した。そして来年一月に発効されることとなった。この条約が発効されることにより核兵器の使用、開発、実験、保有などが全面的に禁止される。核兵器保有国に対する強い圧力となることが期待される一方、世界の安全保障環境が厳しい現状で軍縮進展は容易ではない。しかし、この条約が非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のフィン事務局長が強調する「核軍縮の新たな区切りとなった」ということに違いはない。

 私は核兵器廃絶の実現に向けて今以上に関心を持ち、知識をつけ、発信していきたい。なぜなら廃絶すべきだという意見を持つ人が多くなればなるほど、社会全体が廃絶に向かって行動すると考えるからだ。

 核兵器禁止条約の発効に必要な批准数は五十か国・地域に達したものの、被爆国である日本はこれに含まれていない。なぜ日本が含まれていないのか。それは「核の傘」に頼ることにどこか納得している。つまりは核兵器の恐ろしさや廃絶に関心が薄い人が多いからではないだろうか。

 私は以前、広島県外の学校に通っていた。毎年、原爆が投下された八月六日に登校して平和学習する広島県とは違い、平和について学び考えるのは小学校の修学旅行で原爆ドーム、平和資料館を訪れるときだけだ。毎年平和について考える事に比べて核兵器の知識は浅く、考える機会も圧倒的に少ない。だから核兵器を禁止せずとも使わなければ良いと考える人が多いのだろう。

 核兵器廃絶を実現するには誰か一人が努力するだけでは難しい。そして廃絶への関心が薄い人も多くいる。だからこそ私はまず自分が核兵器について深い知識をつけ理解し、核兵器の恐ろしさや廃絶の必要性を身近な人から少しずつでも発信していきたい。

【講評】

 広島県外では核兵器の恐ろしさや廃絶の必要性について考える機会が少ないとして、身近な人に発信していくと主張しました。ただ、日本が「核の傘」に頼る理由は核兵器の恐ろしさや廃絶に関心が薄い人が多いからでしょうか。さらに考えを深めてみましょう。

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