くらし

財布に優しく食品ロス減 広島で試み、消費者引きつける工夫

2020/1/22
自販機には賞味期限の近いレトルトカレーなどが並ぶ。「予想以上に人気」と話すオフィスシンの田村浩太さん(広島市東区)

自販機には賞味期限の近いレトルトカレーなどが並ぶ。「予想以上に人気」と話すオフィスシンの田村浩太さん(広島市東区)

 売れ残りなどの「食品ロス」を減らすため、賞味期限の近い商品を安く買える自動販売機やアプリが広島でも登場している。それぞれの工夫を凝らした試みが、「もったいない」とは思うものの、どう行動に移せばいいか分からない消費者の背中を押しているようだ。

 ちょっと変わった自販機の前で立ち止まったのは、広島市安佐南区の会社員礪波(となみ)雅章さん(43)。JR広島駅近くの東区光町の飲食店が連なる通りで見つけた。中をのぞくと、いろんなレトルトカレーが並んでいる。多くは賞味期限が近かったり箱がつぶれたりして、少し安くなった商品だ。

 「珍しいなあ」と試しに購入。「食品ロスってメーカーや小売店の問題だと思っていましたが、これなら自分でも協力できる」

 自販機は、レトルト食品開発製造のオフィスシン(南区)が、昨年から東区と中区に1台ずつ置いている。狙いは、多くの人の注目を引くこと。10円で売ったり、半額以下にしたりもする。反響は予想以上で、300個売れる週もある。今のところ売れ残りがないのが自慢だ。

 おいしく食べられる賞味期限、安全に食べられる消費期限の近い商品を安く買えるアプリ「ノーフードロス」も注目を集めている。コンビニのポプラ(安佐北区)が昨年、全国の直営85店舗に導入した。

 広島県府中町で工務店を営む吉中真理さん(47)は、愛用者の一人だ。アプリを開くと、期限があと数日に迫り、既に棚から下げられたパンやスイーツの写真が並んでいる。うれしいのは半額になっていること。店のレジでアプリを見せると、店員が商品を持ってきてくれる。

 吉中さんは仕事帰りに毎日、店に寄る。夕食や翌日の朝食などすぐ食べるので、期限の短さは気にならない。豆腐やプリンがあると「ラッキー」と喜ぶ。さらに気分が上がるのは、売り上げの一部が発展途上国の給食費に寄付されること。アプリは「あなたが寄付できた給食数」を教えてくれる。「これがあるから通っちゃう。一石十鳥の気分です」と笑う。

 昨年10月に施行された食品ロス削減推進法は、自治体や企業に加え、消費者が削減に取り組むことも努力義務とする。背景にあるのは、膨大な食品ロスだ。消費者庁によると、2016年度の国内推計値は年間643万トン。国民全員が毎日茶わん1杯分の米を捨てるのと同じ量という。

 こうしたロスを少しでも減らそうと、規格外品を中心に売る店も昨春オープンした。広島市西区のスーパー「もったいない」には、賞味期限が近い商品のほか、切れ端のロールケーキや包装の印刷がずれたこんにゃくなどが低価格で集まる。

 「特殊な店」というよりは「お得な店」として親しまれ、常連客が増えてきているという。近くの主婦藤代麻里さん(33)は月2回ほど通う。「安くて助かるし、賞味期限の近いものを買うとすぐ使うので、買い置きするより無駄が減りました」と話す。

 食品ロス対策を研究する山口県立大の今村主税(ちから)准教授は「消費者が思わず興味を持つ工夫や仕組みがもっと増えてほしい。そんなサービスを使うことで、一人一人が自分の生活を見直すきっかけにもなる」と指摘する。(福田彩乃)

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  • ポプラで使えるアプリ「ノーフードロス」の画面。賞味期限などが迫り、安く買える商品が分かる
  • アプリを使って廃棄間近の商品を買う吉中さん(右)=広島県府中町のポプラ府中浜田店
  • パッケージデザインの変更や少しのひび割れで規格外となった商品が並ぶ「もったいない」の店内(広島市西区)

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