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「伝説の家政婦」理想の食卓 長門生まれのタサン志麻さん

2019/5/3 21:00
自宅のキッチンに立つタサンさん。「毎日のことだから料理も食べることも楽しんでほしい」(撮影・浜岡学)

自宅のキッチンに立つタサンさん。「毎日のことだから料理も食べることも楽しんでほしい」(撮影・浜岡学)

 有名レストランの料理人から家事代行スタッフに転身し、いつしか予約が取れない「伝説の家政婦」と呼ばれるようになった。長門市で生まれ、東京で活躍するタサン志麻さん(40)。作りたい料理を追い求め、今の仕事に行き着いた。そんな台所のプロが目指す、理想の食卓とは―。

 ▽仏で修業、家庭料理に衝撃 「ゆったりした時間提供」

 家事代行は1回3時間。1週間分の作り置き料理をさっと、こしらえる。幼児にはやわらかいものを、ダイエット中の人には糖質を控えて…。そんな気配りを、本格レシピの柱に据える。

 2015年、家事代行サービスの仲介サイトに登録すると評判になった。テレビ出演やレシピ本出版の依頼も相次ぐ。「こんな生活になるとは思いもしなかった」

 料理好きは幼い頃から。看護師だった母は忙しくても料理本を読み込み、新しいレシピに挑むような「パワフルな人」。小学生になる前から包丁を持たせてくれた。自然に恵まれ、山で採った栗や山菜、海で釣った魚の調理も遊びの中で覚えた。

 高校卒業後、大阪の調理師専門学校でフランス料理に出会う。「感動的に、おいしくて、のめり込んだ」。1年後に渡仏し、三つ星レストランで研修を受ける。

 そこでの修業とは別に衝撃を受けたのは、ごく一般的な家庭の食卓だという。鍋を火に掛けつつ、食前酒をたしなむという、くつろいだキッチン。食卓にシンプルな家庭料理が並ぶと、とにかく時間をかけ、おしゃべりと食事を同時に楽しむ。「温かい時間が流れていた。日々の食事がとても大事。そう実感しました」

 帰国後は有名店で懸命に腕を磨いた。が、違和感も膨らんでいく。こだわり抜かれた料理を前に、客はよそ行き顔で、子どもは入店お断り。「私の作りたい食卓とは違う」。15年近く身を置いたプロの世界を離れ、家庭料理を学ぶため再び渡仏する決意を固める。

 ところが―。旅費を稼ぐために働き始めた飲食店で転機が訪れる。バイト仲間のフランス人と恋に落ちて結婚。妊娠を機に、自分のペースで働けるように家事代行を始めた。当初は掃除も頼まれ「料理界に負けたようで、家政婦になったとは誰にも言えなかった」。

 そんな気後れが、不思議な変化を遂げていく。腕を振るったフランス料理が、訪問先の家庭で喜ばれた。「子どもさんもおいしいねと言ってくれて。忙しい家族にも、ゆったりした時間を提供できる。私の憧れた世界が、そこにあった」

 顧客は育児、介護に追われる共働き家庭が多いという。「楽しい食事は体も心も元気にする。忙しい家族をお手伝いしたい」。メディアの仕事も増えたが「食べる人に合わせて料理するのが一番楽しい。職業を聞かれると『家政婦です』と答えます」とほほ笑んだ。(田中美千子)

 ▽手軽においしく作るヒント

 タサン志麻さん自身も1歳10カ月の長男を育て、おなかには第2子もいる。自宅で夕食の支度にかけるのは30分程度だとか。手軽においしく料理を作るヒントを聞いた。

 ■あるもので工夫

 例えばしょうゆや塩の種類、調理器の火力の強さは家庭ごとに違いますよね。だからレシピ通りに作ろうと必死にならなくても大丈夫。

 食材も代用が利きます。チンジャオロースの牛肉がなければ鶏肉で、タケノコの代わりにジャガイモを、といった具合。あるもので工夫してみては。

 ■フレンチ 実は楽

 フレンチのように、しっかりと煮込んだ料理は、冷凍にしても味が変わりにくいので作り置きに適しています。おまけにオーブンで肉を焼くだけとか、ワインやコンソメで肉や野菜を煮るだけとか、実は手軽。鍋を火に掛けている間に子どもと遊んだり、洗濯物を畳んだり、時間の有効利用もできますよ。

 ■味付けアレンジ

 唐揚げ粉にカレーパウダーを混ぜてみたり、肉じゃがをだしの代わりにコンソメで煮て仕上げにトマトを加えたり。新しいレシピはハードルが高いという人は、作り慣れた料理を少しアレンジしてください。レパートリーがぐっと増やせます。

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