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セクハラ・性暴力の被害者責めないで 「女性と人権全国ネットワーク」佐藤かおりさんに聞く

2019/5/8 23:56
佐藤かおりさん

佐藤かおりさん

 「拒否すればよかったのに」。セクハラや性暴力の被害者に、そんな言葉が投げ掛けられていないだろうか。被害者が責められ、さらに傷つくケースが後を絶たない。3月に名古屋地裁で娘に対する準強制性交罪に問われた父親が無罪とされるなど、性犯罪の無罪判決も相次ぐ。講演のため広島市を訪れた「女性と人権全国ネットワーク」(東京)共同代表の佐藤かおりさん(51)=北海道函館市=に、セクハラや性暴力を巡る課題を聞いた。(福田彩乃)

 ―佐藤さんもセクハラ被害に遭っていますね。

 派遣社員だった30代の頃、派遣先の上司からセクハラを受けました。好意を寄せられ「2人で飲みに行こう」と頻繁に誘われ、手にキスをされました。曖昧に断ると、研修に行かせてもらえないなどパワハラも加わりました。当時は波風を立てず逃れようと必死でした。母と2人暮らしの家計を支えており、辞められなかったのです。

 多くの被害の背景には何らかの力関係があります。上司と部下、親と子、正社員と非正規労働者などです。私は心身を壊し、ぼろぼろになってやっと会社に打ち明けました。でも余計に傷ついただけでした。

 ―会社は助けてくれなかったのですか。

 他の上司や労働組合に相談しても「うまくやって」とたしなめられました。周りには「無意識の偏見」がありました。男性が女性を性的な目で見るのは当たり前。女性は男性に何かされたら、軽く受け流すのも仕事のうち。そんな空気でした。自殺を考えるようになり、仕事を諦めました。「あの人はやんちゃで通ってる。嫌なら断ればよかったのに」と言われたことは忘れられません。

 ―佐藤さんは退職後、労災保険の申請を巡って国を訴え、勝訴しました。国が認定基準を見直すきっかけとなったそうですね。

 労災認定には、仕事上のストレスの強度が重視されます。3段階ですが、セクハラは一律に中程度とされ、認定は難しい状況でした。

 基準が見直された後は、継続的な身体接触がある場合や、会社に相談しても改善しなければ「強」とされるようになりました。また、被害者は仕事を続けたくて加害者の誘いを受け入れる可能性もあり、同意したと安易に判断すべきではないと指摘したのです。被害者の声が届いたと感慨深かったです。

 ―実態に即した基準になったのですね。他方で、司法の世界ではここ数カ月、性暴力を巡る事件で無罪判決が続いています。

 判決では女性がどれだけ抵抗したかが焦点となっており、納得できません。「反抗すればもっとひどいことをされる」と恐怖を感じても、危険を顧みず抵抗しろというのでしょうか。

 セクハラと同じで、その場の力関係によって従うしかないケースは少なくありません。被害者と加害者の関係性に配慮し、同意の有無や同意せざるを得ない状況だったかを論点にすべきです。相手が嫌だと感じたら、それは被害なのです。

 ―「加害者」からは、嫌かどうか分からず困るという反論もありそうです。

 それは加害を認めたくない人の言い訳です。性的な話題を出さないと会話が続きませんか。相手の意識がもうろうとした状態で、性的な関係を求めてもいいのですか。違いますよね。

 性暴力の啓発ポスターには「夜道を歩かないで」といった被害者への注意を促す言葉が目立ちます。しかし、変わらないといけないのは加害者です。

 被害の多くは男性が加害者、女性が被害者ですが、日本はまだ男社会。性暴力やセクハラの防止対策は政治の重要課題としても挙がりにくい。自分や家族、誰もが被害者になり得ると分かってほしいのです。

 <さとう・かおり>北海道函館市出身。派遣社員の時、上司からのセクハラ、パワハラ被害に遭って退職した。労災認定がされず、2010年に国を相手に行政訴訟を起こし、認定を勝ち取った。一連の訴えは、国が労災認定基準を見直すきっかけとなった。11年に働く女性のための労働組合「パープル・ユニオン」を設立した。13年から現職。

 ▽相次ぐ性犯罪の無罪判決

 名古屋地裁岡崎支部は3月、愛知県内で19歳の娘に対する準強制性交罪に問われた父親に、無罪判決を言い渡した。検察側は、娘は長年の性的虐待などで心理的に抵抗できない状態だったと主張。判決は虐待を認定したが「拒み続けて回避できた時期もある」などとし、抵抗不能だったとは言えないと結論づけた。検察側は控訴した。虐待の被害者や専門家から「被害者の抵抗の有無で犯罪かどうかを判断するのはおかしい」と刑法の見直しを求める声が強まっている。

 ほかにも、被害者の抵抗の程度が争点となった判決が続いている。広島地裁は2月、強制性交罪に問われた男性を無罪とした。同意はなかったとする女性の証言の信用性は認めたが、被告が反抗を著しく困難にしたとまでは言えないと判断した。3月には、福岡地裁久留米支部が準女性暴行罪に問われた男性を無罪とした。相手の女性は酔っていたが「抵抗できない状態につけ込んだとは言えない」とした。

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