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【カルチャーNavi】「広島本」出版不況でも元気 多彩なジャンル、郷土愛刺激

2019/6/27 11:39
フタバ図書八丁堀店で、広島本を集めたコーナーに立つ佐々岡店長

フタバ図書八丁堀店で、広島本を集めたコーナーに立つ佐々岡店長

 本が売れにくい出版不況にあって、「広島本」が元気だ。広島東洋カープ関連をはじめ、広島にまつわるビジネス書や雑学本、小説、エッセーも出版が相次いでいる。出版元は地元に限らず、東京の大手のほか少部数を自主制作する「リトルプレス」という形態も。広島本人気の背景を探った。

 毎週日曜の本紙読書面に載る地元書店の人気本ランキング。直近の23日には全国でベストセラーの故樹木希林さんらの著書に交じって、1位「地図で楽しむすごい広島」(洋泉社)、4位「マツダ心を燃やす逆転の経営」(日経BP社)、7位「熱狂のお好み焼」(ザメディアジョン)、8位「広島の経済」(南々社)がランクインした。

 「地図で楽しむ―」は2017年の千葉版からスタートしたシリーズ本。洋泉社(東京)によると、西日本でのトップバッターとして発刊した。地図や統計データを駆使し、地元でも意外と知られていない情報を紹介する。担当編集者の柴田理恵さん(43)は「地元愛が強い土地柄でもあり、西日本で最も読者の獲得が期待できる」と手応えを話す。

 広島本といえば、カープや原爆関連が定番とされてきた。最近もカープを引退した新井貴浩さんの自叙伝「ただ、ありがとう」(ベースボール・マガジン社)や、今年の広島本大賞に選ばれたノンフィクション「原爆」(集英社)が話題となっている。一方で、「広島には地域経済を論じた類書がなかった」と元日銀マンが著した「広島の経済」が増刷となるなど、ランクインする広島本の幅は広がっている。

 フタバ図書八丁堀店(広島市中区)の佐々岡隆店長(56)は「広島本は種類が増え、カープ人気もあってよく売れている」と売り場の感触を語り、「面白い本を扱う地元の出版社も出てきた」と話す。

 「広島の経済」の出版元は、「迷ったときのかかりつけ医」シリーズを手掛ける東区の南々社。最近は幕末・維新期を舞台にした歴史小説「広島藩の志士」も好調という。西元俊典社長(64)は「地域に密着し、知識と実用の両面で役に立つ情報が受け入れられている」とみる。

 本分社(中区)の財津正人社長(56)によると、広島本人気の火付け役は11年刊行の「広島学」(新潮社)に行き当たる。それまでの定番と違って「県民性や文化を面白おかしく紹介し、読者に新鮮に映った」と分析する。

 新潮社(東京)によると、「広島学」は出版業界全体の減衰傾向が強まった東日本大震災直後の発行だったが、増刷を重ねた。米オバマ前大統領の広島来訪やカープの25年ぶりのリーグ優勝が追い風になり、累計7万1千部に達しているという。「厳しい時期に部数が伸びたのは驚異的」と新潮文庫編集部副部長の佐々木勉さん(53)。

 佐々木さんによると、今の出版業界は「多品種少量」の時代という。バブル崩壊後、「本を出せば売れる時代」は終わり、読者層のターゲットを絞った本づくりが主流となった。広島本のようなご当地本でも品数を増やして一定数売れれば採算が合うというわけだ。

 「リトルプレス」と呼ばれる少部数形態でも、広島関連本が注目されている。3月に専用の売り場ができた広島蔦屋書店(西区)。懐かしい広島の思い出をつづったエッセーや東広島市の風景を集めた写真集などが並ぶ。「売り上げを追うのではなく、独自の売り場づくりが来店客を増やすきっかけになる」と同店の江藤宏樹さん(43)は話す。

 江藤さんは、リトルプレスの書き手を店舗に招き、作り手と買い手が直接触れ合える「文学フリマ」を構想する。「地元の文化の底上げに一役買いたい」。地元の作家や話題の掘り起こしが進めば、広島本の幅はさらに広がりそうだ。(増田咲子)

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