くらし

【老後のお金が足りない?】<上>サラリーマン夫婦世帯

2019/7/10 8:38

 「老後の生活費が2千万円不足する」という金融庁の報告書が波紋を呼び、年金が参院選の争点に急浮上している。実際に高齢者世帯ではどれくらいのお金が必要なのだろう。年収や年金額の違いで老後の生活がどう変わるのか、広島市中区のファイナンシャルプランナー高橋佳良子さん(54)に家計のモデルを分析してもらった。政策判断のポイントと合わせて紹介する。

 ▽定年退職、いきなり赤字に

 まずは中規模の企業に勤める平均的なサラリーマン世帯の家計モデルを高橋さんに示してもらった。

 想定は、会社員男性(60)とパートの妻(60)の2人暮らし。定年を来春に控える。現在の年収はボーナスを含めて575万円。預貯金は1千万円。退職金は500万円の予定だ。子ども2人は独立し、今のところは黒字で暮らせている。

 しかし高橋さんは「退職後すぐに月約6万円の赤字に転落する可能性があります」と指摘する。65歳まで延長雇用で働いたとしても、年収は一般的に現在の6割ほどにダウン。15年前に購入した中古マンションの住宅ローンもまだ500万円残っており、預貯金と退職金の取り崩しが一気に進みかねない。

 夫婦とも仕事を辞めた65歳時点ではどうか。収入が夫婦の年金計23万円だけになる。住宅ローンは完済していても、現役の頃と生活水準を変えなければ毎月約2万円の赤字が出る。不足分は預貯金と退職金から穴埋めする。

 何とかなりそうだが、ここで考慮すべきなのがマンションの経費。老朽化が進めば、修繕積立金や管理費が高くなり不足額はさらに膨らむ可能性がある。戸建ての場合も200万円近いリフォーム費用が予想される。「屋根や外壁、水回りの修理や、家電の買い替え費用も念頭に置いてほしい」と高橋さんは忠告する。

 実際、広島市安佐南区の主婦(63)の家ではトイレと給湯器が次々故障し、テレビと冷蔵庫、洗濯機も耐用年数を過ぎたという。「想定外の出費が重なり100万円近く飛んだ」と嘆く。そんな出費のために10年ごとに約50万円を見込むよう、高橋さんは勧める。

 子どもの結婚でもお金はかかる。西区の会社員男性(62)は、娘2人の結婚祝い金として計600万円を支出した。家を買う資金や孫の教育費の援助も求められるかもしれない。「妻に少しでもお金を残したいが、親の介護が必要になればさらに出費がかさむ。年金だけでは到底暮らせない」と不安がる。

 高橋さんは「体に無理のない範囲でアルバイトやパートをするなど、少額でも毎月の収入を安定的に得られると楽になる」と指摘する。退職前から徐々に生活規模を縮小することも助けになる。再雇用による給与や年金額を把握し、その範囲内で暮らすといい。

 車を手放し、レンタカーやカーシェアを利用すると固定費は随分浮く。夫婦仲の維持も大切だ。例えば2人一緒に同じ部屋で食事し、テレビを見ると電気代やガス代が削れる。「早いうちに老後の不足額を計算し、そこから逆算して働き続ける年数を考えておいた方がいい時代です」と高橋さんは強調する。(ラン暁雨)

この記事の写真

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

くらしの最新記事
一覧