くらし

【老後のお金が足りない?】<中>自営業の夫婦世帯

2019/7/11 9:36

 今回は、ファイナンシャルプランナーの高橋佳良子さん(54)=広島市中区=に自営業の高齢夫婦の家計モデルを示してもらった。このケースでは、老後にいくら必要なのだろう。

 ▽国民年金だけ 生活苦しく

 国民年金だけを掛けてきた高齢夫婦世帯が、預貯金を取り崩す生活になることは珍しくない。夫(72)と妻(71)が店舗兼自宅で自営業をしているモデルもそうだ。1カ月の収入は、自営業と2人の国民年金を合わせて17万円。500万円の預貯金からは、毎月約2万円が消えていく。

 それでも、預貯金は20年後まで残り、家計破綻は先のように見える。だが、高橋さんは「夫婦のどちらかが亡くなった時に、生活が立ちゆかなくなります」と指摘する。

 夫が男性の平均年齢の81歳で亡くなった場合はどうなるか。家計のマイナスは月約3万1千円に膨らむ。収入は妻の国民年金の月6万円だけになる。だが支出のうち食費や水道光熱費、固定資産税などは2人のときの半分にはならない。預貯金は7年余りで底を突く。

 高齢者にとって、住まいをどうするかも大きな問題だ。60歳以上を対象にした内閣府の昨年度の調査によると、住まいの不安を感じている人は26・3%で、うち27・3%が体が弱ったときの住環境を心配している。今回の自営業夫婦の家計モデルでは、自宅のバリアフリー改修や、月十数万円かかるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などへの住み替え費用の捻出は困難だ。

 自宅や土地の売却が最後の切り札になる。高橋さんは「介護施設などへの住み替えに備えて早いうちから、いくらで売却できるかを試算しておいてほしい」と強調する。生命保険の死亡保険金などの額も点検し、どういう暮らしが何年できるかの見通しを持つことが大切という。

 実際、自営業の有権者からも「年金だけでは足りない」との声が上がる。広島市西区の表具職人の男性(77)は「ふすまの需要がなくなった。もう商売としては成り立たんよ」と嘆く。生活費だけでなく、自動車の維持など商売の経費にも預貯金をつぎ込む。職人一筋で60年続けた誇りはあるが、夫婦の間では店を畳む話題が上る。

 高橋さんは「経費のかかる店は畳み、シルバー人材センターなどで特技を生かして収入を得るのも一つの案」と言う。これから自営業を長く続ける人には、自営業者の退職金制度とも言われる「小規模企業共済」の加入などを勧めている。

 ただ、苦しい老後に納得がいかない自営業者は少なくない。国民年金の保険料を真面目に払ってきたのに、医療や介護が必要となる老後に大きな決断を迫られる―。中区で喫茶店を営む女性(69)は、政府が年金制度の持続をうたうフレーズがむなしく響くという。「『100年安心』はどこに行ったのでしょうか」(衣川圭)

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