くらし
【老後のお金が足りない?】<下>1人暮らし世帯
最終回は1人暮らしの高齢者の家計のモデルを、ファイナンシャルプランナーの高橋佳良子さん(54)=広島市中区=に示してもらった。想定は、収入が夫の遺族年金も含めて月8万円の1人暮らしの女性(75)。預貯金も10万円だけで、ほぼ年金に頼った生活を送る。
▽生活保護が最後の「とりで」
食費は1日千円としても月3万円かかるが、その半分に切り詰めていると設定した。それでも生活はぎりぎり。預貯金がわずかなので、これ以上臨時の出費があると厳しい。高橋さんは「もし病気になって入院したら生活が成り立たない」と話す。
節約のために食事を減らして栄養状態が悪くなったり、体調を崩しても病院の受診を我慢したりする人も少なくない。そうした場合は、生活保護も検討する必要があるという。
国民年金の支給額は満額でも月6万5千円。1人暮らしで国民年金だけでは、仕事の収入や貯蓄、子どもの支援などがないと生活は厳しい。特に女性は男性より受給額が少ない傾向にあり、平均寿命も長いため、貧困に陥りやすい。
広島市内の有権者にも話を聞いた。安佐南区で1人で暮らす女性(80)も「削るところは食費しかない」と話す。うどん玉を買っても2、3食に分けて食べる。肉は高価なのでほとんど買わない。知人に熱中症に注意するよう言われるが、部屋に扇風機はあってもうちわでしのぐ。
骨粗しょう症や目まいなどで定期的に医療機関に通っているので、医療費は毎月5千円ほどかかる。公営住宅だからなんとか暮らせているが、今後消費税が上がるとさらに苦しくなる。独立した娘2人は当てにできない。「せめて迷惑を掛けないように元気でいないと」。自身の葬儀費用に充てる十数万円の預貯金は残しておきたいという。
西区の派遣社員女性(65)は高齢者施設で食事や入浴、排せつなど介助の仕事をしている。体力的に週3回がやっとで、手取り約10万円。夫と離婚し、1人暮らし。月7万円の年金を合わせても生活に余裕はない。「仕事ができなくなったら生活保護を受けるしかない」と話す。
核家族化し、頼れる人が少なくなったことが老後の不安を大きくしている。老親のいる現役世代も、自身の生活に追われる。西区の会社員男性(53)は、「自分の老後の資金もためたいが、目の前の生活をどう乗り切るかで精いっぱい」。マンションのローンが70歳まで残り、40代で転職して退職金はあまり期待できない。大学生の子どもにも学費がかかる。1人暮らしの母親に援助する余裕はないという。
中には、無職や非正規雇用の子どもに年金を当てにされ、共倒れになるケースもある。最後のセーフティーネットである生活保護を受ける高齢者は増え続けている。高橋さんは「老後の貧困の課題は今後もっと大きくなる」とみる。(鈴木大介)
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