くらし
生理の悩みオープンに 異色の漫画、共感広がる
多くの女性にとって憂鬱(ゆううつ)な毎月の生理(月経)。普段、話題にしづらいテーマをコミカルに描き、共感を得ている異色の漫画がある。その名も「生理ちゃん」。生理を擬人化したキャラクターが登場し、前向きに生きるヒントをくれる。実は上手に付き合う方法を知れば、つらい痛みやイライラとさよならすることもできる。生理のこと、もっと堂々と学んでみませんか。
▽低用量ピルで痛み改善
広島市の会社員女性(32)は十数年間、月経前症候群(PMS)による心身の不調と生理痛に悩んできた。生理の1週間ほど前からイライラが募り、気分が落ち込む。頭痛や乳房痛もひどい。生理が始まると下腹部や腰が激しく痛み、貧血にも襲われる。
つらい症状に長年耐えてきたのは、母親の一言が影響している。「生理は女の証し。みんな我慢しているのよ」。生理痛くらいで休むのは情けないことだと言われた気がして、ずっと気合で乗り切っていた。
でも30歳を過ぎた頃から痛みが増し、仕事にも支障が出るようになった。出血量が多い2日目は起き上がれず、鎮痛剤が効くまでベッドでうずくまる。男性上司には事情を言えず、腹痛で遅刻するとだけ伝えた。「サボっていると思われているかも…」。自己嫌悪を感じる日々だったという。
婦人科に行くと「月経困難症」と診断され、低用量ピルを処方された。すると飲み始めた翌月には痛みが薄らいだ。「副作用もなく、心も体も軽くなって人生が開けた。早く飲んでおけばよかった」と話す。
女性の数だけ生理にまつわる悩みがある。でも経験したことがない人には、理解されにくい。漫画家小山健さんが描く「生理ちゃん」の大きな魅力は、シュールな作風でくすっと笑わせつつ、女性の気持ちを代弁してくれる点だ。
月に1度ふらりとやってくる生理ちゃん。締め切りに追われるライターや彼氏と旅行中の女性の元にも容赦なく現れ、動揺させる。パンチを食らわせて生理痛を引き起こし、血を抜き取って貧血にさせる。
そんな嫌われ者のような面がありながら、女性にそっと寄り添う存在としても描かれている。理解のない男性にお仕置きしたり、「(女性は)大変なのを生理を理由にできないのが大変なんですよ」と心に刺さるせりふを発したり。共感ポイントが満載だ。
ウェブメディア「オモコロ」で連載が始まるとネット上で話題になった。反響を受け、昨年KADOKAWAから単行本が発売された。今秋には実写映画も公開される。(ラン暁雨)
■我慢せず治療も選択肢に 女性クリニック「ラポール」の中原院長に聞く
広島市中区の女性クリニック「ラポール」の中原恭子院長(59)によると、今の女性の生理の回数は一生のうち450回に及ぶ。回数は多産で生理が少なかった昔の人の約9倍。中原院長は「日数を合計すると6〜8年。それだけ長い間、苦しいのを我慢することはありません」と話す。
生理の回数が増えると、子宮内膜症のリスクも高まる。この40年で患者数が急増した。放っておくと不妊やがんの原因にもなる。
生理の悩みに有効なのが低用量ピルだ。女性ホルモンのバランスを整えて排卵を抑制。痛みも和らげる。出血を年に3、4回にできるタイプも登場した。月3千円前後で処方してもらえる。
ただ、まだ広がっているとは言えない。日本で承認されて20年になるが、日本家族計画協会(東京)の2016年調査によると、普及率はわずか4%。4割前後の女性が服用している欧米主要国とは対照的だ。
「背景には副作用への不安があります」と中原院長。ピルは高・中用量だった時期に、血栓症や乳がんの恐れが指摘されていた。低用量に改良され、安全性が確立されたのに、それが知られていない。
服用初期に軽い吐き気や不正出血が起こることがあるが、徐々に治まる。血栓症も、標準体重の非喫煙者では1万人に対して3〜9人と非常にまれだ。
中原院長によると、最近注目されているのが「IUS(子宮内避妊システム)」を使った治療法。子宮内に縦3センチほどの器具を入れると、黄体ホルモンが出て排卵を起きなくさせる。
「血栓症のリスクがないのがメリット。生理回数を減らすこともでき、2割の人には生理が全く起こらなくなります」。高い避妊効果もあり、5年間持続する。保険適用になれば、自己負担額が1、2万円ほど。年1、2回の健診が必要だが、ピルより安い上、飲み忘れの心配もない。
中原院長は、生理に関する正しい知識を得るために学校での啓発が必要と指摘する。日本では生理痛を「病気ではない」と考えて我慢するか、鎮痛薬による対症療法で済ませる人が少なくないからだ。
「生理神話」のようなものがあり、「毎月きっちり来ないといけない」「痛みは我慢して一人前」と思い込んでいる人もいる。「生理は妊娠のために必要ですが、不快な症状があるなら治療も選択肢に加えてほしい」と呼び掛けている。
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