くらし

ベランダ喫煙、泣き寝入り?

2019/8/16 19:34
イラスト・大友勇人

イラスト・大友勇人

 マンションなど集合住宅のバルコニーでたばこを吸う「ベランダ喫煙」。隣人のたばこの煙が部屋に流れ込み、悩む人は少なくない。国は7月、改正健康増進法の一部を施行し、学校や病院の敷地内を原則禁煙とした。しかし、家庭では周囲への配慮義務にとどまる。「家で吸うのは自由」と考える愛煙家もいるだろう。もやもやを解決するには、どうすればいいのだろう。

 ▽広がる煙と健康被害 有害成分、洗濯物や壁にも

 広島市南区のマンションに住む主婦(43)は、6年前から隣の住人のベランダ喫煙に困り果てている。最低でも1日3、4回、多いときは20分置きに10回以上吸うので、深夜に臭いが鼻を突く日もある。「暑くても窓を開けられない。洗濯物も干せない」とため息をつく。

 同じ悩みを持つ人は多い。2年前には、ベランダ喫煙に悩む人でつくる全国組織も結成された。会員は1900人を超える。こうしてたばこの煙に「NO」の声を上げる人が増える背景には、健康被害の深刻さが分かってきたことがある。

 厚生労働省によると、受動喫煙を原因とする年間死亡者は、2016年の推計で1万5千人に上る。肺がんや心筋梗塞に加え、脳卒中との因果関係も分かり、10年の推計値から8千人ほど増えた。乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクも高まるという。

 受動喫煙は、他人のたばこの煙を吸い込む「2次喫煙」だけにとどまらない。広島県医師会の津谷隆史副会長(64)は、たばこの成分が染み付いた壁や服、カーテンから有害物質の影響を受ける「3次喫煙」にも注意が必要と言う。ぜんそくや化学物質過敏症の人は発作を起こしたり、気分が悪くなったりもする。

 ベランダで喫煙すると、実際、どんな物質がどれくらいの範囲に広がるのだろう。産業医科大(北九州市)の大和浩教授(59)は、集合住宅1階のベランダでたばこに火を付け、煙に含まれる微小粒子状物質(PM2・5)の濃度を調べた。上の階と隣室のベランダと室内の計4カ所で通常より高い数値を示し、周囲にも影響が及ぶことが分かった。

 ▽避けたい隣人トラブル 納得できるルール作りを

 ベランダ喫煙を控えてもらうため、住民にチラシを配る管理組合は多い。その際、健康への影響や火災のリスクについても具体的に伝えることが重要だ。マンションの喫煙トラブルに詳しい弁護士の和田森智(さとし)さん(45)=広島市中区=は、チラシの効果が薄い場合は「明確なルールがあると抑止力になる」と助言する。

 賃貸なら大家が禁煙を契約時に明記し、分譲の場合は管理組合が管理規約に盛り込んでおくといい。組合員の4分の3以上の賛同が得られると、新たに規約に加えることもできる。

 一方、規約では防ぎきれない現実もある。広島市佐伯区の主婦(34)が住むマンションではことし5月、住民の要望で規約が変わり、バルコニーでの喫煙は禁止された。しかし、まだ吸っている人がいるとみられる。「3歳の娘への影響が心配。なぜ分かってもらえないのでしょう」と戸惑う。

 マンションでの隣人トラブルは、たばこに限らない。迷惑を掛けるのは「お互いさま」と反論したい喫煙者もいるかもしれない。自分は、隣の部屋がうるさくても我慢している。だから、たばこくらい大目に見て―。

 「確かに、集合住宅では住民同士、ある程度の『受忍』が必要とされています」と和田森さん。しかし今は、たばこを我慢できる世の中の限度が狭まっていると強調する。「たばこの健康被害が明らかとなり、国による受動喫煙の防止策も進んでいる。喫煙者には、いっそうの配慮が求められていることを知ってほしい」と呼び掛ける。

 喫煙者の意見も聞きながら「吸う時間帯を決める」「一角に喫煙所を設ける」といった互いに納得できるルールを模索することも一案だと、和田森さんは勧める。困ったら弁護士に相談するなど第三者の力を借りると、冷静に話し合いが進められそうだ。(福田彩乃)

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  • 「ベランダ喫煙に困ったら大家や管理組合に相談を」と話す和田森さん(広島市中区)

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