くらし

あおり運転に遭遇したら…

2019/8/25

 危険な「あおり運転」が後を絶たない。今月、茨城県の常磐自動車道で後続車をあおった男がドライバーを殴ってけがを負わせた疑いで逮捕された。近年、死亡事故に至った痛ましいケースも起きている。たとえ重大な事件・事故につながらなくても、あおられて「怖い思いをした」というドライバーは少なくない。警察も取り締まりを強化しているが、もし直面したとき、どんな対応や注意が必要なのだろう。

 関連記事「あおり運転の心理状態描いた動画 岡山トヨペット制作」はこちら


 【体験談】恐怖や理不尽さ、今でも 急停車させられ怒鳴られた/ぴったり追尾やパッシング

 常磐道の事件では、あおられたドライバーが車の窓を開け、顔を殴られた。茨城県警は18日、指名手配中の男を傷害容疑で逮捕。同乗していた女も男をかくまったなどとして逮捕した。この事件を踏まえ、無料通信アプリLINE(ライン)の「中国新聞くらし」アカウントを持つ読者に尋ねたところ、あおり運転を受けたという体験談が多く寄せられた。

 「今でも怖くて…」。そう振り返るのは福山市のヘルパー女性(59)だ。2017年6月、交差点での右折方法が気に障ったのか、後ろから追い抜いてきた車に急停車させられた。男性ドライバーに怒鳴られ、窓を開けて謝罪。事なきを得たものの、「また遭遇したら、うまくかわせるかどうか」と不安がる。

 広島市佐伯区の会社員男性(38)は今年5月、山陽道の左側車線を走行中、追い越し車線をゆっくり走る車を抜いた途端、追い掛けられた。数キロ先のインターチェンジで降りてやり過ごし、警察に通報。車のナンバーを伝えたがうやむやになった。「取り締まりをもっと強化してほしい」と求める。

 体験の多くは、車の後ろをぴったり追尾されたり、ライトでパッシングされたり。停車中の前方の車に信号が青に変わったのをクラクションで知らせると、30分ほど追い回されたという女性もいた。

 チューリッヒ保険会社(東京)が18年5月に実施した調査では、全国のドライバー2230人のうち70・4%が「あおられた経験がある」と答えた。そのうち400人は、あおりの実態についても回答。トップは「もっと速く走るよう挑発された」で78・5%を占め、「幅寄せされた」(21%)などが続いた。

 【どう対応】いち早く現場「脱出」を 窓開けず状況撮影、証拠に

 「あおってきた車の挑発に乗ってはいけない」。交通心理学の第一人者、九州大大学院の志堂寺和則教授(57)が求めるのは、現場からのいち早い「脱出」だ。

 安全な場所に停車し、あおる車をやり過ごす。一般道路の場合は道路の左端へ。高速道路は路側帯へ。近くにサービスエリアなどがあれば、人目があるため「脱出」しやすくなる。それでも相手が付きまとってきたときは、決して車の窓を開けてはいけない。ドアもロックして110番通報する。

 ただ、実際の場面で冷静に対応できるかどうか。「何をすべきか日頃からよく考え、備えておいてほしい」と志堂寺教授。携帯電話などで現場の状況を撮影できれば、被害の証拠になる。常磐道の事件でも逮捕の決め手は、ドライブレコーダーの録画映像だった。

 事件を受け、ドライブレコーダーの購入者も増えている。イエローハットモンテ吉島店(広島市中区)では、売り上げが2・5倍ほどになったという。人気なのは、車の前後に1台ずつ据え付けるタイプ。後方から詰め寄る車も撮影できる。

 あおられないためのグッズも注目されている。「ドライブレコーダー録画中」と書かれたステッカーはその一つ。同店の藤永政明さん(47)は「車の後部に貼ることで、被害の抑止が期待されている」と話す。

 【避けるには】自分の運転、きっかけにさせない

 なぜ、あおるのか。志堂寺教授は「あおられる側にも少なからず要因がある」と指摘する。車間距離が十分だったか、進路変更が強引ではなかったか…。自らの運転を点検し、あおられるきっかけをつくらない心掛けも重要という。

 あおり運転は17年6月、神奈川県の東名高速道路で起きた死亡事故を契機に社会問題化した。無理やり停車させられた夫婦が、後続のトラックの追突を受けて亡くなった。警察庁は18年1月から取り締まりを強化。道交法の車間距離保持義務違反は18年に1万3025件に上り、17年の7133件からほぼ倍増した。

 「運転はテクニックだけではない。ドライバーの性格や精神状態も大きく影響してくる」。交通心理士の資格を持つテクノ自動車学校(広島県熊野町)の竹内勝博社長(49)は強調する。

 安全運転をしているつもりでも、周りから「運転が荒い」「速すぎる」と見られることも。その際の感情の揺れがトラブルの火種になる。自分はいらだちやすいのかどうか。ドライバー自身が見つめ直すのに加えて、竹内社長は「同乗者がドライバーの怒りやストレスを抑える役割も果たしてほしい」と助言する。(林淳一郎、福田彩乃)

この記事の写真

  • 「録画中」と書かれたステッカー。あおり運転の抑止になりそうだ(広島市中区のイエローハットモンテ吉島店)

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

くらしの最新記事
一覧