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趣味と実益、間借りカレー 夜営業の店、昼に賃料格安で

2019/8/31 19:53
ポップな雰囲気のビアバーで間借り営業する宮本さん(左端)

ポップな雰囲気のビアバーで間借り営業する宮本さん(左端)

 「間借りカレー」をご存じだろうか。夜営業のスナックやバーを昼に格安で借りて、ランチ営業するカレー専門店だ。大阪発祥のスタイルで、全国に広がりつつある。借りる側にとってはコストが抑えられ、貸主も店を使わない時間を有効活用できるメリットがある。中国地方にも登場した「間借り」の魅力とは―。

 ▽低リスクでこだわり実現

 昭和のムードが漂うスナックの扉を開けると、香ばしい匂いに包まれた。JR倉敷駅南口近くのビルで昨夏から営業する「倉敷カレー」。午前11時から午後3時まで、スナック「BiBi(ビビ)」を間借りする。駅前の一等地だが、賃料は相場の3分の1以下だ。

 約40平方メートル、11席の店内には、カウンター越しに焼酎のキープボトルやウイスキーがずらり。重厚なソファにダウンライトなど、昼間から夜の雰囲気を醸し出しているのが面白い。

 看板メニューは店名と同じ「倉敷カレー」。なじみ深い日本のカレーと香辛料が効いたスパイスカレーの合い掛けで、5種以上の副菜をトッピングしている。土日には行列ができるほどの人気だ。

 店主の小田真奈美さん(27)は倉敷出身で、フレンチの料理人として大阪で4年間働いた。カレーが大好きで、有名店を100店以上食べ歩き、「間借り」スタイルに出合った。「既存の店舗を使えば初期費用も安いし、個人で出店するハードルが低そう」。帰郷後、ビビのオーナーと知り合った縁で営業を始めた。

 野菜ソムリエでもある小田さんは、地元の野菜をふんだんに使う。今の季節ならオクラやナス、枝豆など。「生野菜を使うと原価率が高い。賃料が安いのは助かります」

 広島市中区ではビアバーを間借りする店が登場した。「ぱんちょり.」の名で毎週土日の正午から2時間限定で南インドのカレーを提供する。広島電鉄の江波電停近くにあるビール醸造所に併設されたおしゃれなバーを借りた。洋楽が流れるポップな店内で楽しめるのは青魚など旬の食材を使ったカレーだ。

 店主の宮本和輝さん(33)は25歳ごろから趣味でスパイスカレーを作り始めた。2年前にはインドとスリランカに滞在して修業。カレーとビールの相性の良さに着目し、バーの間借りを思い付いた。賃料の代わりに売り上げの一部をオーナーに支払う。「ファンを増やして、いつか自分の店を持ちたい」と夢見る。

 コンサルティング会社「カレー総合研究所」(東京)の井上岳久代表(50)によると、間借りカレーは10年ほど前から徐々に増加。現在は大都市を中心に、全国で200店舗以上あるという。若い作り手が自由な発想で香辛料を配合する「スパイスカレー」流行の基盤ともなっている。

 「昼中心のカレー店と、夜主体の飲食店が補完し合うシステム。低リスクで出店できるので若い人も新規参入しやすい」と分析する。客にとっても好みの味を開拓し、その店がいつか実店舗を持つのを応援する楽しみがある。日本の国民食カレーの新たな可能性が広がりそうだ。(ラン暁雨)

この記事の写真

  • サバカレーと卵カレーの2種盛り(手前)とチキンキーマカレーと卵カレーの2種盛り。カレーは3種類から選べる。1種類のみは千円、2種類1150円、3種類1300円
  • 店が併設されたビール醸造所の前に立つ
  • 店内にはアルコールのボトルが並び、夜の空気が漂う
  • 8割の客が注文する「倉敷カレー」。香辛料15種を使ったスパイスカレーと、タマネギや果物で甘みを出した日本風カレーの合い掛け。サラダ、ドリンクバー付きで千円
  • 小田さんが間借りする店は、スナックやバーが入るビルの中

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