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「持ち帰り文化」根付く? 外食時の食品ロス削減へ

2019/9/6 19:46
飲食店向けのステッカー画像。ドギーバッグ普及委員会のサイトから無料でダウンロードできる

飲食店向けのステッカー画像。ドギーバッグ普及委員会のサイトから無料でダウンロードできる

 外食時にせっかくの料理を食べ残してしまい、「もったいない」と思ったことがある人は多いだろう。今はまだ「持ち帰り」を衛生面のリスクから店側が断るケースが多いが、「食品ロス」を減らそうと広島でも対応する動きが広がりつつある。海外では当たり前の「持ち帰り文化」は根付くだろうか。

 ▽食中毒リスク理解し「自己責任」

 「持ち帰っていいですか」。広島市中区流川町の「牛たんや服部」では客が希望すると、内田直希店長(39)が皿に残っていた料理を容器に詰めて手渡す。牛タンや卵焼きなど加熱したものに限って対応し、当日中に食べ切ることや「お客さまの責任でお願いします」と口頭で伝える。内田店長は「出来たてを味わってほしいですが、食品ロスが社会問題になり、最近はニーズが高まっている」と話す。客からも好評で、これまでトラブルはない。

 老舗うなぎ店の「柳橋こだに」(中区銀山町)でも2年前からサービスを始め、ほぼ毎日利用があるという。うな重や白焼きが対象。食べ切れない客には店員が声掛けし、持ち帰れることを伝える。その際、涼しい場所に保管し、すぐに食べてもらうことなどを一言添える。要望があれば、保冷剤も提供する。

 中国地方で営業するファミリーレストランも取り組みを進める。すかいらーくホールディングス(東京)は、運営するガストやバーミヤン全店で生もの以外の持ち帰りに対応。「店内で食べ切れない場合はお持ち帰り用容器をお持ちします」とメニューに記す。衛生面に配慮し、容器を入れる袋には「お早めにお召し上がりください」と書いてある。ロイヤルホストとサイゼリヤも持ち帰り対応する。

 背景にあるのは膨大な食品廃棄物だ。農林水産省によると、2016年度の国内推計値は約643万トン。1人が毎日茶わん1杯分を捨てる量に当たる。今年5月には「食品ロス削減推進法」が成立。消費者庁などは、持ち帰りの注意点をまとめた「外食時のおいしく『食べきり』ガイド」を作り、活用を呼び掛ける。

 ただ多くの店はまだ慎重だ。持ち帰った後に食中毒が起きれば風評被害の恐れもあるからだ。広島県食品生活衛生課は「飲食店の料理はその場で食べ切るのが前提。時間がたつほど食中毒のリスクが高まるため、対策が欠かせない」と指摘する。広島市のある店主は「持ち帰りは常連客に限定している。信頼関係がないと難しい」と打ち明ける。

 こうした中で、消費者に責任の自覚を促す動きもある。NPO法人「ドギーバッグ普及委員会」(東京)は、「自己責任において持ち帰ります」と店に意思表示する会員用カードを作った。飲食店用にも「自己責任でお持ち帰り頂けます」と書いたステッカー画像を無料ダウンロードできるようにした。現在、飲食店や個人の会員数は計600以上で、中国地方でも増やしたい考えだ。

 「ドギーバッグ」は米国発祥の持ち帰り容器。残った料理を持ち帰るのは体裁が悪いと考える人へ「飼い犬に与える」名目で命名されたといわれる。普及委員会の理事長で愛知工業大経営学部の小林富雄教授(46)によると、海外では利用が一般的だ。ただ日本では食中毒の報道があるたびに敬遠され、客側も気恥ずかしさから浸透しなかった。

 小林教授は「料理の作り手への敬意」「環境に優しい」というポジティブな印象に変えることが普及の鍵と期待する。「外食時は適正な量を頼むことと食べ切ることを意識した上で、残ったら持ち帰りという選択肢も持ってほしい」と話す。そんな姿勢は、食品ロスを大量に出す生活を見直す一歩になりそうだ。(ラン暁雨)

この記事の写真

  • 食べ切れなかった料理を持ち帰り用容器に詰める内田店長(広島市中区の牛たんや服部)
  • ドギーバッグ普及委員会が会員に配っているカード

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