くらし
補聴器購入、まず相談医受診 1―3カ月試用して効果見極め
補聴器、医療機関を受診せずに買おうとしていませんか―。医師や専門店は、受診した上で、1〜3カ月間は貸し出し用の補聴器を装着して自分に合うかどうか確かめてから購入することを勧めている。もうすぐ敬老の日。最近、おじいちゃん、おばあちゃんの耳が遠いと感じていたら、一緒に正しい補聴器選びのポイントを確認してみてはどうだろう。
広島市民病院(中区)の耳鼻咽喉科上席主任部長を務める井口郁雄医師(62)は、日本耳鼻咽喉科学会が認定する「補聴器相談医」でもある。井口医師は「補聴器が必要かなと思ったら、まずは相談医を訪ねてほしい。他の病気はないか、補聴器の効果が見込めるか、調べなければいけません」と強調する。
耳の病気を治療すれば聞こえるようになるのに、早まって補聴器を買えば、無駄になってしまう。補聴器は両耳で平均30万円前後と高価だ。中には100万円を超えるものもある。
聞こえにくい原因はさまざまだ。中耳炎や耳あかの場合もある。うつ病で人との会話にうまく反応できないケースもある。病気によっては補聴器を着けて炎症が悪化したり、治療が遅れて完治しなかったりする恐れもある。聞く力が著しく低いときは、補聴器の効果が期待できない。人工内耳を付けるなど手術が必要な人もいる。
聞こえ方も人によって違う。医療機関の検査では、苦手なのは高い音か低い音かなどを調べる。また、聞いた音を言葉に変換して理解する力も探る。販売店では簡単な測定しかできない場合も少なくない。
どんな販売店を選ぶかも大切だ。お薦めは常勤の認定補聴器技能者がいる「認定補聴器専門店」。ポイントは、購入前に補聴器を数カ月間、貸してくれるかどうかだ。店によって貸出期間は異なり、有料の場合もある。滝口耳鼻咽喉科(中区)の補聴器相談医、滝口峻院長(77)は「最低でも1カ月、できれば3カ月ほど試せるといい」と話す。
耳や脳が補聴器に慣れるのに時間がかかるからだ。補聴器の着け始めは、急に聞こえるようになるため、多くの音に脳が混乱し、普通の人は気にならない空調や車の音をうるさく感じる。しかし、時間がたつにつれ、音を聞き分ける脳の機能も回復し、雑音が気にならなくなるという。
通信販売では、購入時の補聴器の調整やその後の修理などの対応が不十分でトラブルになっている例もあることを知っておきたい。
補聴器は恥ずかしいと感じる人もいるかもしれない。日本補聴器工業会(東京)の2018年の調査によると、難聴と感じている65歳以上の人のうち、補聴器を持っているのは16・8%にとどまった。しかし、井口医師は「聞こえが悪いと脳への刺激が少なくなり、人との会話も減ってしまいがちになる。認知症のリスクも高まる」と指摘。「正しく使って生活の質を上げてほしい」と呼び掛けている。
▽見た目ばかり気にしない
補聴器は現在、耳に掛けるタイプと耳の穴に入れるタイプが主流だ。小型化が進むが、目立ちにくさばかり重視するのは禁物だ。
トーシン・広島補聴器センター(中区)の認定補聴器技能者、山田知子さん(44)は「小さいほど電池交換が難しい。スムーズに扱えるかも気に掛けてほしい」と助言する。小型の電池は5〜7日しか持たない。聴力によっては小型では十分に聞こえないこともある。
仕事で必要なのか、家の中だけで使うのかによっても選び方が変わる。補聴器センターアイ(中区)の認定補聴器技能者、福岡真吾さん(42)は「どんなときに使いたいのかを買う前に教えてほしい」と話す。また購入したら、3〜6カ月に1度は店で点検してもらおう。(福田彩乃)
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