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広島・京都文化フォーラム「雅と創造 古典でひもとく」 10月12日、パネリスト紹介

2019/9/18 19:55
刈安(かりやす)でグラデーションに染めた絹のストールを干す吉岡さん

刈安(かりやす)でグラデーションに染めた絹のストールを干す吉岡さん

 「源氏物語」「平家物語」などの古典文学をたどりながら、現代の日本文化にもつながる宮中文化や広島と京都の接点を語り合う広島・京都文化フォーラム2019「雅(みやび)と創造 古典でひもとく」が10月12日、広島市中区の中国新聞ホールである。パネルディスカッションには、それぞれの道を究める女性2人が登壇する。京都の「染司(そめのつかさ)よしおか」6代目で染織家の吉岡更紗(さらさ)さん(42)と、福山の大島能楽堂を拠点に活躍する喜多流能楽師の大島衣恵さん(45)に「染めの心」「能の心」を聞いた。

 ▽季節薫る色彩を追求 「染司よしおか」6代目・染織家 吉岡更紗さん

 京都市の南部、伏見区に江戸後期創業の「染司よしおか」の工房はある。戦前に休業を余儀なくされ、戦後に祖父が染屋(そめや)を再開するにあたり、この地に移った。伏見はかつて「伏水」と書かれたほど地下水が豊富で酒蔵も多い。「鉄分の少ない伏見の良質な水は飲んでもおいしい。染色でも透明感のある美しい色を生み出します」と力を込める。

 絹、麻、木綿、和紙など天然の素材を、花や実、樹木の皮や根など植物に宿る色素だけで染める。「今の季節は近くの畑でタデアイの収穫が終わる頃。藍染めの染料のもとになる沈殿藍作りが大詰めを迎えます」

 明治になって化学染料が欧州から伝わるまで、日本にはたくさんの色が生まれた。「その数300色以上、(表地・裏地や、複数枚を重ねた衣の袖口や裾などの配色を示す)かさね色は240種といわれます」。中でも平安時代は桜色、柳色、杜若(かきつばた)色と季節に咲く花の名を冠した色が増えた。若竹色、青竹色と季節が進むにつれ変わりゆく緑にも、繊細な色名がつけられた。

 源氏物語には褒め言葉として「ときにあひたる」という記述がある。「季節に合った色の組み合わせのかさねを着ている人は教養があり、センスのある人だと分かるのです」。染屋も歳時記のように、その折々の自然と向き合うなりわいだ。

 「お水取り」で知られる奈良・東大寺修二会(しゅにえ)には染めた和紙を奉納し、京都・石清水八幡宮の石清水祭では供花を作るなど古社寺の祭事に携わる。「途絶えさせてはいけない重要な仕事」と責任の重みを感じる。

 アパレルデザイン会社に勤務していた3人姉妹の末っ子。父の5代目吉岡幸雄さんが古典の色を追求する姿を見て家業を継ぐ決意をし11年前、工房に戻った。「先人が生み出した色彩を表現できるよう研さんを積むことが私の仕事であると思っています」と語る。

 ▽伝統の型に個の深み 喜多流能楽師 大島衣恵さん

 福山市中心部の大島能楽堂で15日あった定期公演。源氏物語を素材にした「半蔀(はしとみ)」で、光源氏とのはかない恋を慈しむ夕顔を演じた。「能は鎮魂の芸能ともいえます。物語の主人公たちが幽霊となって現れ、最後は祈りの力を得て救われていく。こうしたスタイルを『夢幻能』と呼びます」と説明する。

 源氏物語などの王朝文学や平家物語に題材を求めた演目は多い。「能を大成した世阿弥は名作といわれる文学作品をそのまま舞台化するのではなく、シテがこの世に残した思いにスポットを当てることで見る人の心にもさまざまな思いが巡る、そんな仕掛けを作り上げたのだと思います」

 能の5流派の一つ、喜多流女性能楽師のパイオニアだ。喜多流大島家の4人きょうだいの長女。自宅には祖父久見さんが建てた能楽堂があった。2歳で初舞台を踏み、久見さんや父政允(まさのぶ)さんのようなシテ方になりたいと思った。だが喜多流400年の歴史で女性は一人もいなかった。

 それでも能を諦めなかった。東京芸術大で小鼓を学んだ後、福山に戻って祖父や父の下で修業。自分の気持ちを流派幹部に手紙で伝え、周囲の後押しも得てシテ方への道を切り開いた。

 古典の伝承とともに地元福山を題材にした創作能に出演。近年は海外公演や外国人への実技指導の機会も増えている。「能にはあらゆる舞台芸術の源泉がある」。海外の演劇人が語る視点に刺激を受ける。

 「芸能は形をとどめることができない無形文化。今を生きる人の肉体を持って表現しなければ次世代に伝えることはできない」。他方、舞の所作には先人から受け継いできた型がある。「型は器。稽古を重ね、中身を充実させていく。人生の豊かさ、成熟度が深みとなるのです」

 祖父の師で、最初の人間国宝の一人となった十四世宗家喜多六平太の言葉を久見さんからよく聞かされた。「能が分かったときには体が動かねえよ」。その覚悟を胸に、一生を懸け芸を磨く。(山中和久)

 フォーラムは午後2時から、広島市中区土橋町の中国新聞ホール。パネリストは3人で、もう1人は日本古典文学が専門の国際日本文化研究センター教授の荒木浩さん。文化勲章を受章した陶芸家今井政之さんの家族によるトーク「芸術 今井家3代」もある。無料。

 申し込みは、はがきかファクス、メールで郵便番号、住所、名前、電話番号、参加人数を記入し、〒730―0854広島市中区土橋町7の1、中国新聞企画サービス「広島・京都文化フォーラム2019」係。ファクス082(294)0804。メールevent2@c―kikaku.co.jp 締め切りは24日必着。

 定員は500人で、応募多数の場合は抽選し、今月末に聴講券を送る。中国新聞企画サービスTel082(236)2244=平日午前9時半〜午後5時半。

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  • 仕舞「船橋」を舞う大島さん

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