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「15年虐待された。だからこそ親に笑顔を」 広島の認定心理士池永さん、センターで相談活動

2019/10/13 20:07
「スマイル アゲイン」と書かれたポロシャツで取材に応じる池永さん(広島市中区)

「スマイル アゲイン」と書かれたポロシャツで取材に応じる池永さん(広島市中区)

 児童虐待を受けた経験を踏まえ、子どもに暴力を振るう親が立ち止まるためのサポートをする女性がいる。広島市佐伯区の認定心理士、池永加寿子さん(56)。「わが子を傷つけるのは自分の心が壊れかけているから。まず親が笑顔にならないと」。お母さんに笑ってほしかった幼い頃の願いを胸に、昨夏、任意団体を設立。親の悩みに耳を傾ける活動を続けている。

 平日の昼間、池永さんの携帯電話が鳴る。「子どもをたたいてしまった」。泣きながら話す母親が少し落ち着くまで待ち、その日のうちに会って事情を聴く。

 ▽期待捨てられず

 広島市中区を拠点にする「ピアサポート子育て相談センター」では、昨年7月から約100人のカウンセリングに応じた。相談者の多くが母親で、周囲に頼れる人がおらず育児不安を抱える。家事育児に関心の薄い夫への不満を吐き出す人も少なくない。90分に設定した初回の個別相談が、3時間を超えることもある。

 活動には、時間も労力もお金もかかる。それでも力を注ぐのは「昔の自分みたいな子を一人でも減らしたいから」。15年間虐待を受けて育ち、愛する親に殴られる悲しみを身をもって知っている。

 両親が離婚し、3歳から18歳まで養父母の元で暮らした。出会った日、新しい子どもいすを用意し、すき焼きで迎えてくれたのが、うれしかった。だがその後、養母にほほ笑みかけられた記憶はない。

 夫婦仲が悪く、養父は育児に無関心で、養母は怒るとすぐ手が出た。近所の人にあいさつをしないと平手でぶたれた。小学校高学年になると、朝起きた瞬間に「顔を見たら腹が立つ」と殴られた。食事も満足にもらえなくなった。

 いつも怖い顔の母だが、好物だったミンチ入り焼き飯を作る姿や、幼い頃につないだ手のぬくもりが忘れられない。暴力におびえながら、ずっと願っていた。お母さんに愛されたい、笑ってほしい、と。「子どもは親を嫌いになれない。わずかな『期待』を、捨てられないんです」

 今も虐待のニュースに接すると、あの惨めな思いがよみがえる。あの子たちも親に期待しては、裏切られているんだろうな―。何とかできないのか。どうすれば親は笑ってくれるんだろう。暴力を振るわれる子どもに自分がかぶり、もどかしい思いが募る。

 「ただ時に親という立場が苦しくなり笑えなくなるのも、自分が親になって分かったんです」。自身も、子どもに手を上げたことがある。当時夫は仕事で忙しく、幼い娘2人の世話に疲れ果てていた。「母親」がどんなものか分からず、教育本に頼ったがうまくいかない。わが子をたたくようになったとき、自分と養母が重なる気がした。

 18歳で家を出て、養母とはそれきりだ。だがもし、第三者が養母を支援していたら、自分には違う未来があったかもしれないとも思う。池永さんは娘たちが巣立ったのを機に、虐待防止のために何ができるかを考え始めた。昨年、認定心理士の資格を取得。「親が子どもに手を出すことはある。そんなつらいときに相談できる相手になりたい」と語る。

 ▽一緒に歩きたい

 池永さんは日々、昼夜を問わず電話や無料通信アプリLINE(ライン)で連絡を受ける。子どもの背中を力任せに押し、わが子の泣き声ではっと我に返った。かっとなってノートで子どもの頭をたたき、後ろめたさから再び暴力を振るう…。親たちが思いを吐き出せるよう、声に耳をすます。その上で子どもの心の痛みにも目を向けてもらう。

 「私だから伝えられることもある」と池永さん。相談者から「親子で笑い合えた」「楽になった」と言われると自分の心の傷も癒えていく気がする。「虐待をした人も受けた人も、サポートがあれば心が回復する。時間がかかっても一緒に歩きたい」

 ▽ピアサポート子育て相談センター

 池永さんが主宰する「ピアサポート子育て相談センター」は、子育てに悩む親や祖父母、親との関係に悩む中高生を対象に個別相談に応じる。大人は1回90分で、初回無料、2回目以降は2千円。中高生は1回60分で、初回無料、2回目以降は千円。親同士や親子での交流イベントもある。活動の詳細は、ホームページで紹介している。

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