くらし

「非認知能力」育もう 作家ボーク重子さん、広島で講演

2019/12/9 19:02
「非認知能力を伸ばす工夫を家庭でも取り入れて」と呼び掛けるボークさん(広島市中区)

「非認知能力を伸ばす工夫を家庭でも取り入れて」と呼び掛けるボークさん(広島市中区)

 「非認知能力」って、どんなものか知っていますか。テストの点数では測れない、自分で主体的にやり抜く力や協調性のことで、いま教育現場でも重視されている。一般社団法人からだの音は先月、広島市中区で、非認知能力に着目した子育てで知られる作家ボーク重子さん(54)=米国在住=の講演会を開いた。人生を豊かにする力を伸ばす育児とは―。

 ▽協調性や自尊心・個性認めて

 ボークさんの子育てが注目を集めたのは、2017年に一人娘のスカイさんがコンクールで「全米最優秀」の女子高校生に選ばれたのがきっかけだ。学力だけではなく、知性やリーダーシップが評価された。ボークさんが母として大切にしたのは非認知能力を育むこと。育児経験をつづった多数の著書は、日本でも話題になった。

 さて、非認知能力とは―。読み書き計算を始め、知識や技能など、数値化できる認知能力ではない。忍耐力、回復力、社交性、思いやり、自尊心など、しなやかな精神力を備え、他人と力を合わせて物事を成し遂げる力のことだ。

 ボークさんが非認知能力と出合ったのは、スカイさんの通った初等学校だ。教科書を使わず宿題もない。授業では、どんな人間になりたいか、クラスで必要な生活ルールなどを話し合う。志高く育った子どもたちは自然と成績が良くなり、希望の進学をかなえていた。家庭でも非認知能力を伸ばそうと、主に二つのことを心掛け、実践した。

 一つ目は、家庭が子どもにとって「心の安全」が守られる環境であること。親は「ああしなさい」「こうしなさい」と過剰に指示したり、自分の思いや希望を押し付けたりしないことが大切という。子どもの意見を否定せず、自分で決めて行動するのを後押しする。

 わが子を責めてしまう人は、まず「1日1個、自分を褒めてあげて」とボークさん。「自分の良さを認められたら、子どもやパートナーのことも肯定的に捉えられますよ」と助言する。

 二つ目は、子どもの「パッション(好きでたまらないこと)」を見つける手伝いをすること。「好き」という思いがあれば、失敗しても立ち上がれる。親は、自分の職場や活動の現場を見せたり、多様な職種の人の話を聞かせたりして、子どものパッション探しをサポートしたい。

 さらにボークさんは、親が挑戦や失敗をする姿を子どもに見せることを勧める。自身も、40歳を前にアートギャラリーをオープン。失敗や成功を繰り返す姿を、娘に隠さず見せてきた。「かっこ悪い母の姿を見ているから、娘は失敗が怖くないみたい」

 こうした育児法は、親が子を自分と違う一つの個性と認めるところから始まる、とボークさん。現在、育児に悩む親などのライフコーチも務めており「子どもが自分らしい人生を切り開くには、まず親が非認知能力を育み、自己肯定感を高めて幸せになって」と呼び掛ける。(標葉知美)

 ■創造力ある人へ、OECDも注目 京都大大学院の楠見教授

 2020年度から小中学校、高校で順次導入される新学習指導要領でもキーワードになっている「非認知能力」。京都大大学院の楠見孝教授(教育認知心理学)に解説してもらった。

 楠見教授によると、非認知能力は「社会情動的スキル」ともいう。00年にノーベル経済学賞を受賞した米シカゴ大、ジェームズ・ヘックマン教授が著書でその力の重要性を提唱し、広まった。

 OECD(経済協力開発機構)も、認知能力と同様に重要な能力として注目する。加盟国の学校や家庭をはじめ広く、非認知能力を育成するよう勧めてきた。背景には、グローバル化に対応できる柔軟性や協調性、AI(人工知能)に置き換えられないような創造力のある人材を育てる狙いがある。

 学力偏重の傾向がある日本の学校現場でも、「生きる力」「キャリア教育」として、1990年代半ばから育成に力を注いできた。国は新学習指導要領で「学びに向かう力、人間性等」と表現し、子どもに備えたい資質・能力の一つに挙げる。

 楠見教授は、幼い頃から自制心や他者への思いやりを身に付けることは、いじめや不登校を減らす力にもなると指摘する。「教育する側が、子どもをさまざまな角度から見るよう変わってほしい」と訴える。

この記事の写真

  • 楠見孝教授

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

くらしの最新記事
一覧