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地域医療構想、病院名公表に異議 城西大・伊関友伸教授

2019/12/24 19:18
伊関友伸教授

伊関友伸教授

 少子高齢化に応じた病院の在り方を示す地域医療構想。この構想を進めるため、再編・統合が必要な公立・公的病院名を公表したことに異議を唱えるのが、自治体病院の経営に詳しい城西大の伊関友伸教授(58)だ。「医療崩壊を招きかねない」と危惧する。講演に訪れた府中市上下町で今月、地域医療の在り方について聞いた。(衣川圭)

 ▽過疎地の実情、考慮せず/診療の形、住民と議論を

 ―なぜ病院名の公表が波紋を広げたのですか。

 高齢者を支える地方唯一の病院の名前が多く挙がっていたからです。がんや救急などの診療実績が少ないという理由です。積雪などで遠くの病院にいくのには時間がかかり、近くの病院がなくなると困るという地域の事情などは考えていない。頑張っている職員の誇りを傷つけ、住民に病院がなくなるという不安を抱かせました。

 都市部と地方を同じ物差しで線引きするのは無理があります。厚生労働省は「統廃合ありきではない」と言います。しかし実際には、「あの病院は危ない」という風評被害を起こしています。

 ―日本は病床数が多すぎると言われます。減らさなくてもいいのですか。

 地域医療構想が目指す医療体制の効率化は必要です。高齢者が増え、働く世代が減っていき、今のままでは病院運営が成り立たなくなるからです。例えば、都市部の距離の近い病院を統合し、医師らを一つの病院に集めて救急対応などの能力を高めれば、住民にもメリットがある。医師の働き方に余裕が生まれると、時には過疎地の病院の支援に回ることもできます。

 しかし、こうした効率化は「権力」で進めるものではありません。地域医療を守るという「共感」を広げ、住民を交えてどうすればいいかを考えることが重要です。足りない機能や医師や看護師の年齢構成、救急搬送に要する時間など、地域ごとのデータを基にじっくりと議論すべきです。

 ―上下町の府中北市民病院のように、地域に1カ所しかない病院に求められることは何ですか。

 外来診療と高齢者の療養です。子どもから高齢者までを診る総合診療医のニーズが高まります。在宅で療養する高齢者が増える中、必要な時に安心して入院できる「地域包括ケア病床」などの維持も必要です。

 ―今の医療の課題は人材不足と指摘されています。

 地方の医師や看護師の不足は深刻です。今後は、長時間労働の是正のため、地方病院の医師が都市部の病院に引き揚げられる可能性もあります。今のままでは看護師の夜勤体制を保てない病院も増えるでしょう。人材育成に力を入れて、医師や看護師に選ばれる地域づくりが大切です。住民も「お客さま」ではなく、「限られた資源を利用する当事者」という意識が必要です。

 経営危機に陥った富山県のあさひ総合病院は、199床を109床に減らしました。その一方、高齢者のニーズに応えられるよう機能を充実して職員の労働環境を改善すると、常勤医師や看護師も増え、収入も上がりました。単なる規模縮小ではなく、地域の医療を「バージョンアップ」させるという視点が、医療を守る鍵です。

 いせき・ともとし 埼玉県職員を経て、04年に城西大准教授。11年から現職。全国の病院再編に関わってきた。著書に「人口減少・地域消滅時代の自治体病院経営改革」(ぎょうせい)など。

 ■地域医療構想とは

 団塊世代が75歳以上になる2025年の医療ニーズを踏まえ、急性期のベッドを減らすなどの方向性を示したのが地域医療構想だ。医療介護総合確保推進法に基づき、各都道府県が策定している。

 病床の機能を(1)集中治療が必要な「高度急性期」(2)一般的な手術などをする「急性期」(3)リハビリなどをする「回復期」(4)長期入院の「慢性期」―に分類。厚生労働省はこうした病床の機能を見直したり、病床を減らすことを含む病院の再編・統合が必要とする。

 9月に名前が公表された公立・公的病院数は、広島県は13▽山口県は14▽岡山県は13▽島根県は4▽鳥取県は4。

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