くらし
穂先にぶつけた、ほとばしる思い 脳性まひの藤岡さん(広島)が作品集
脳性まひで手足や言語に障害がある広島市安佐南区の藤岡耕二さん(67)は、毛筆の書にほとばしる思いをぶつけ、詩を紡ぐ。今月初めに公判が始まった相模原市の障害者殺傷事件などに心を寄せ、命の重みや寛容の大切さを訴える。「人は多様です。僕なりの表現で偏見や差別を少しでも吹き飛ばせれば」。したためてきた書と詩を作品集として刊行した。
▽「みんな個性の塊なんだ、と」
利き腕の左手で毛筆を握り、文字を表す。力強い楷書、流麗な行書や草書。書体はさまざまだ。「人間も同じです。人種や文化が違うし、僕みたいに障害のある人もいる。そこを受け止め合わないと、争いや格差はなくならない」
とりわけ2016年は心が痛んだ年だった。相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷される事件が起きた。書のテーマはおのずと「命」に向いた。
それぞれの命が精いっぱい生きてるぞ
みんなの命は繋(つな)がっている
詩も編んだ。
どんなものにも命があると感じられたら/それはきっと/あなたが素敵(すてき)な人だから
「人は何かを感じて行動する。他人が変わるのを待つんじゃなくて、自分から発信していかないと。僕は書と詩で伝えたい」。障害者の自立を支援するピアカウンセラーとしてNPO法人などを運営する傍ら、創作に励む。一つの作品を仕上げるのに100枚ほど書き、広島市内のコンクールに出品。障害者の親友と作品展も開く。
名古屋市で生まれた。生後6カ月の時、高熱のため脳性まひを患った。特別支援学校を出て、20代で「自立するには親元を離れなければ」と西日本各地を「放浪」。心の通じ合う友人ができ、1986年に広島市へ移り住んだ。
書を始めたのは50歳の頃だ。それまで油彩などを描いていたが、絵筆を持つ指に力が入らなくなった。脳性まひの二次障害で頸椎(けいつい)を痛めたためだった。いら立ちながら、そばにあった筆ペンで書いた。
神は無言
「よく考えると、無言ではなかった。絵筆よりも太くて持ちやすい毛筆なら腕をうまく使って表現できることに気付けたから」
作品集には、20年近く書きためたものから約70点を収めた。タイトルは「種芽花実(しゅがかじつ)」。植物が種から花や実を結ぶまでを人生になぞらえた。62歳で授かった娘(5)に「広い心を育んでほしい」と願った書と詩のほか、「夢」「時」をテーマにした作品も載せた。
「障害も『個性』とよく言われるけど、ふに落ちるまでに時間がかかった。なぜ僕がこんなふうになったのか、ずっと考えていました」と振り返る。
ただ、出会う人を見ていると、それぞれの感情で泣き、笑っている。親しい障害者も写真や絵で喜びなどを表現する。「みんな個性の塊なんだと思い至ったんです。受け止め方もさまざま。その多様性を実感してもらえるよう、僕も自分らしさを表現していきたい」
作品集は108ページ。文芸社刊。1980円。(林淳一郎)
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