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【この働き方、大丈夫!】週休3日「手抜き」の幸せ 広島のパン店「ドリアン」田村陽至さん【動画】

2020/1/19 18:58
パン生地の表面に切れ込みを入れる田村さん。いつも笑顔だが、パンに向き合うときは真剣な表情に

パン生地の表面に切れ込みを入れる田村さん。いつも笑顔だが、パンに向き合うときは真剣な表情に

 「すてきな手抜き」で、働き方改革を進める広島市のパン店「ドリアン」のオーナー田村陽至さん(43)。年明けから、働く時間をさらに短縮する「実験」に取り組んでいる。目標は週休3日。おいしいパンを作って喜んでもらい、ゆとりを持ってニコニコ暮らす―。日本を明るくする「幸せな働き方モデル」を模索中だ。

 ▽質と量を厳選、良い品を安く 余暇は発酵の勉強や育児に

 田村さんが焼くのはハード系のパン。「万人受けはしない」と言うが味わい深く、熱心なファンが多い。週3日営業だった中区八丁堀の店舗は、今年から週2日営業になった。パンを焼く日や定期購入客への発送も含め、働くのは週4日。日数を減らす代わりに、1日に焼くパンの量を増やし、売り上げを維持する。

 これまで週6日の午前中だけ働き、午後はオフだった田村さん。人に会ったり、ブログの更新をしたりしていたが、ステップアップのために挑戦したいことが無限にある。だからこそもっと「手抜き」が必要だった。週休3日になれば、小麦や発酵の勉強、後進の指導に充てる時間を増やせる。昨夏に生まれた長男の子育てにも力を入れたい。

 パン作りを学びに来る若い研修生にも影響された。20代の彼らは、週4日働いて食べていけると判断すれば、残り1日は趣味などに充てるという発想。「だったら週4日労働でも成り立つビジネスモデルを作ってみよう」と考えた。

 田村さんの手抜きを支えるのが、南区の工房にある手作りの石窯だ。2年前に新調した。奥行き4メートル。窯を大きくすることで、1日分の販売量に当たる約100個を1回で焼けるようになった。以前の窯の3倍だ。さらに効率を上げるため、今年からは木・土曜に2日分のパンを焼く。

 朝4時。石窯の火入れから作業は始まる。2時間ほどまきを燃やして窯が熱くなったら、前日に仕込んだパン生地を窯の中へリズム良く入れていく。焼き上がるまでに、翌日の仕込みや事務仕事をこなす。注文や仕込みの量はパソコンで管理。全て手書きでやっていた頃と比べると、かなり時短化された。

 パンも4種類が基本だ。1、2キロのずっしりサイズ。種類を絞り、大きく成形すると作業が単純化できる。具を入れていないので日持ちもする。

 「手抜き」の代わりに材料はベストのものを選ぶ。貴重な国産有機栽培の小麦粉で作ったパンは抜群においしい。「だから大目に見てもらえる。労働時間が減って、お客さんも安く買える。みんなハッピーです」

 朝11時、八丁堀の店舗にパンを届けて仕事は終了。1日7時間。かつての半分以下だ。

 この発想は8年前、本場・欧州のパン修業で生まれた。1年滞在し、猛烈に働いていた自分のおかしさに気付いた。現地では実力店でも職人が働くのは午前中だけ。シンプルな製法なのに味も価格もかなわない。店側も客も、多少形がふぞろいでも、焦げ目が付いても気にしない。そんな適度な緩さが心地よかった。

 「日本人は百点満点を目指そうとあくせくし、消耗している。本来は80点でも豊かに生きていけるんです」と田村さんは言う。わざわざ物事を複雑化して、自分の首を絞めているように感じる。見た目の精度を追求しすぎたり、クレームに過剰反応したり…。

 それでは、働き手も社会も疲れ切ってしまう。「だからほどほどに働いて、最終的においしいものができればいいって思うんです。力を抜けば心に余裕ができて、優しくなれる。好循環が生まれますよ」。シンプルな働き方はどこまで進化するのだろう。(文・ラン暁雨、写真・荒木肇)

この記事の写真

  • 夜明け前、石窯にくべる広葉樹のまきを準備する
  • 香ばしい匂いが立ち込める工房で、焼きたてのパンを並べる

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