くらし

健康と要介護のはざま 「フレイル」なら生活見直そう

2020/2/11 18:43

 ▽厚労省、2020年度から質問票 食事・運動・社会参加に意識を

 「フレイル」という言葉を最近よく聞きませんか。簡単に言えば介護が必要になる一歩手前の状態だ。生活を見直せば、健康に戻せる分岐点でもある。厚生労働省は2020年度、75歳以上の健診でフレイルについての質問票を導入するなど対策に本腰を入れる。専門家は心身の衰えを招かないため、「食事」「運動」「社会参加」の3本柱を意識するよう呼び掛ける。

 新しい質問票は、高齢になると起こりがちな15項目を尋ねている。この1年間に転んだことがあるか▽週1日以上外出しているか―など。市町村が75歳以上対象の後期高齢者健診で使い、心配な点があると生活習慣の改善や医療機関の受診を促す。医療や介護が必要になる時期を遅らせて、費用を抑える狙いもある。

 これまでは食が細る傾向のある75歳以上の健診でも、40〜74歳の肥満傾向などを探る「メタボ健診(特定健診)」と同じ質問票を使っていた。フレイルに詳しい広島市立リハビリテーション病院(安佐南区)の西川公一郎病院長は「高齢者はむしろ、体重減少を伴うフレイルの影響が大きいことが分かってきた。早めに改善すれば状態が戻ります」と強調する。

 食事、運動、社会参加のいずれかが崩れると悪循環に陥りやすい。例えばこんな具合だ。食べる量が減ると足腰の筋力が落ちる。立ち上がったり、歩いたりしにくくなり、外に出たくなくなる。動かないので食事も淡泊になる。

 何に気を付ければいいのか。食事に関して西川病院長は「肉などのタンパク質を意識して取って」と呼び掛ける。高齢者のタンパク質摂取の目安は「体重1キロ当たり1グラム以上」。体重50キロの人なら1日50グラム以上だ。1食分の鶏のささみやサケの切り身には約20グラムのタンパク質がある。3回の食事の中で、肉と魚に加え、卵や乳製品、大豆なども取るよう心掛けたい。

 筋力不足のサインは1秒間に1メートルのペースで歩けないこと。横断歩道を青信号の間に渡りきれないときは筋力が落ちていると自覚したい。「少しずつでも運動する習慣を付けましょう」と西川病院長。地域の健康体操教室は、運動と社会参加の両面で効果的という。

 新しい質問票には「固いものが食べにくくなったか」などの問いもあり、食べたり、話したりする機能の衰えにも着目している。広島県歯科医師会の上川克己常務理事は「口の機能が低下すると、無意識に軟らかい食べものを好むようになり、タンパク質を取らなくなります」と説明。口がフレイルの悪循環の始まりになる可能性を指摘する。

 出無精になって人に会わなくなると、口の衛生に気を使わなくなる。不衛生な口内環境は、のみ込みの衰えと合わせて肺炎の原因になるので注意が必要だ。毎日の歯磨きなどで清潔に保ち、定期的に歯科で虫歯や歯周病をチェックしよう。かみ応えのあるものを食べたり、カラオケで歌ったりするのも口の健康維持につながるという。(衣川圭)

 ▽「5年内に要介護」の危険度3・5倍 国立センター調査

 フレイルの人が5年以内に要介護となる危険度は、フレイルでない人の3.5倍―。国立長寿医療研究センター(愛知県)の研究班が、高齢者約3500人を追跡した調査で浮かび上がった。

 調査は介護を受けていない65歳以上が対象。体重減少▽筋力低下▽疲労感▽歩行速度の低下▽身体活動の低下―の五つのうち三つ以上に当てはまる人をフレイルと定義した。介護保険の利用状況などを分析すると、フレイルの人が5年間にかかった平均の介護費用は、該当なしの人の10.2倍に上っていた。

 研究班の島田裕之・老年学・社会科学研究センター長は「フレイルの人は早い段階から介護が必要な状態に進みやすく、社会保障費を圧迫する原因にもなる」と指摘。フレイルの前の段階から、意識して運動などをする習慣づくりを呼び掛けている。

この記事の写真

  • 広島市南区の高齢者が集う健康体操教室。こうした取り組みは各地で広がる

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

くらしの最新記事
一覧