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【この働き方、大丈夫?】第2部 結婚・出産遠すぎて<1> 男性の婚活「年収300万円の壁」

2020/2/16 19:05
イラスト・大友勇人

イラスト・大友勇人

 雇用の不安定さや経済的な不安が30、40代の恋愛にも影を落としています。連載第2部は、遠ざかる結婚や出産の現実に目を向けます。とりわけ男性は、年収が少ないほど未婚率が高くなる傾向があるようです。初回は婚活に立ちはだかる「年収300万円の壁」に悩む男性の声から紹介します。(ラン暁雨、林淳一郎)

 ■彼女の親が反対。派遣社員には結婚はぜいたく品なのかな

 □広島市の派遣社員男性(41) コールセンター勤務。年収250万円。「非正規」を理由に婚約破棄された。

 僕、「平成ジャンプ」なんです。アイドルじゃないですよ。昭和生まれの人が未婚のまま平成時代を飛び越えてしまったという意味です。年収が300万に届かない派遣社員には、結婚はぜいたく品なのかなあ。

 10年ほど前に婚約破棄されたんです。当時は関東で働いていて「職が不安定な男とは結婚させられない」と相手の親に反対されました。事務職の彼女と付き合い始めた頃は僕も小売業の正社員でしたが倒産しちゃって。派遣で働きつつ転職を目指していたのに、見事に駄目出しされました。

 彼女とは食べ歩きやカラオケなどお金をかけないデートを楽しみ、2年ほど付き合っていました。金銭感覚も似ているし、子ども好き。イルミネーションを見に行った帰りに結婚を約束しました。

 でも幸せだったのはその時まで。彼女の親は僕が派遣社員と聞き、家にあいさつに来るのも許さなかった。彼女は母親から「絶対苦労する。別れなさい」と連日、責められて。

 そのうち彼女からのメールの返信が遅くなり、電話もつながらないことが増えた。それまでは毎晩電話で一日の出来事を報告し合っていたのに。しばらくして「親の小言に疲れた」と一方的に別れを告げられ、携帯電話を握りしめたまま脱力しました。派遣社員というだけで結婚が許されないんですね。

 結婚も子育ても、大人になったら当たり前にするものと思っていたんです。正社員の友人たちは「イクメン」して充実しているのに、僕だけが社会への義務を果たしていない。このままだと、令和もジャンプして一生独身でしょうね。

 ■低所得で敬遠される。一度もマッチングに至らない

 □廿日市市の介護職男性(43) 老人福祉施設の正職員で年収300万円弱。婚活歴8年。

 これまで婚活パーティーに20回以上参加しました。でも一度もマッチングには至っていません。恐らく介護の仕事が原因です。肉体労働で低所得のイメージを持たれ、敬遠されているのでしょう。

 会場では男性が女性の間を回転ずしのように回り、プロフィルを交換して品定めし合う。職業と年収欄は必ずチェックされますからね。年収300万円ないと相手にされません。毎回数千円の参加費が痛いですよ。

 もともと介護職志望じゃありませんでした。氷河期世代で就活は全滅。製造業などで派遣社員として働きましたが、人間関係を築くのが苦手で社員登用試験にも落ちて。自信をなくして引きこもり気味になりました。このままじゃ駄目だと思い「介護職なら正規で働ける」と資格を取りました。小さい頃に祖父母と同居していたので、高齢者に慣れていましたし。

 でも就職して、未婚率の高さに驚きました。これまで勤めた三つの施設では8割以上が未婚。今の職場でも12人中既婚者は2人だけです。収入が理由で、結婚を機に転職する「男性の寿退職」も多いですよ。ただ自分で言うのも何ですが、介護職の男性って優しいんですよ。性格も面倒見もよくて家事もできる人が独身だったりするのになあ。

 少し前、飲み会で会った女性といい感じになったんです。でも介護職と言った途端、相手のテンションがだだ下がりです。僕への興味を失ったのか、会話も弾まなくなって。そそくさと他の席に移動していきました。悔しくて朝までやけ酒しましたよ。

 ▽未婚率、経済力で差

 働き盛りの男性が結婚しようとするときにぶつかるのが「年収300万円の壁」だ。総務省の就業構造基本調査(2017年)によると、年収300万円未満で非正規雇用の30、40代男性の未婚率は73・8%に上る。正規雇用でも53・1%だ。

 一方で、年収500万円以上の正規雇用の男性は、未婚率は15%にぐっと下がる。「安定した経済力」は、結婚の条件としていまだ根強いようだ。

 厚生労働白書によると、50歳時点で一度も結婚したことのない男性の割合「生涯未婚率」は15年で23・4%だった。この割合は推計で、35年に28・9%、40年に29・5%までアップする見通しだ。

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