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【この働き方、大丈夫!】売り上げ増あえて目指さない ランチ100食限定の定食店経営、中村さん

2020/2/28 19:45
「人生の幸せを決めるのは『自己決定権』。自分で働き方を選べるのが理想です」と話す中村さん(撮影・大川万優)

「人生の幸せを決めるのは『自己決定権』。自分で働き方を選べるのが理想です」と話す中村さん(撮影・大川万優)

 「午前9時から午後5時まで働いて、家族4人で毎日夕食を食べる」。そんなシンプルな願いをかなえるため、京都の定食店「佰食屋(ひゃくしょくや)」オーナーの中村朱美さん(35)は、あえて「売り上げを減らす」ビジネスモデルを実践する。今月、広島市内で講演し「利益だけにこだわるのをやめたら、家族も従業員も幸せになれる」と語った中村さんに、仕事について聞いた。

 ▽業績至上主義 心がすり減る

 中村さん夫妻が1日100食限定のステーキ丼専門店を開いたのは8年前。国産牛の味が口コミで広がり、行列が絶えない人気店に。ランチ営業のみで午後5時台には全員が退勤。

 働く時間を凝縮するために、売り上げに「100食」という上限を決めることにしました。早く売れたら、早く帰れるという発想の転換です。

 そもそも会社はなぜ売り上げ増を目指さないといけないのでしょう。従業員のため? 社会のため? 実際のところ、経営側の欲なんじゃないかと思うんです。いつ景気が傾くか分からないから自己資金をためないと不安。そうして社員を長時間働かせても、健全に成長しない。

 この「業績至上主義」によって今、日本の社会は行き詰まっているのではないでしょうか。非正規雇用や低賃金が広がり、閉塞(へいそく)感が漂っている。

 よく「100食以上売ったら?」「夜も営業したら?」と聞かれます。確かに売り上げは伸びるけど、働く時間が増えるほどには給料は上がりません。私も会社員時代は成果を上げても給料はあまり伸びず、残業続きの日々に「何のために働いてるんやろ」と心がすり減ることがありました。

 だから現状を変えて「仕事と生活のバランスが取れる職場」を作ろうと思ったんです。「働きやすさ」と「ビジネスとして成り立つ経営」の両立を目指したのが今のスタイル。売り上げは、経営と従業員の暮らしを賄えればいいと割り切っています。

 ポイントは「他店より安くておいしいこと」と「限定」という希少価値。ステーキ丼は税抜き千円だ。早いときは3時間足らずで売り切れる。

 営業中は忙しいのですが、働く時間が短いからか従業員には余裕があって、笑顔が絶えません。店の生き生きした雰囲気がお客さんにも伝わっていると思います。

 広告や宣伝費を使わない分、低価格で本当においしいものを提供できます。午後2時過ぎには完売し、翌日の仕込みをすれば終わり。外が明るいうちに帰るうれしさは格別です。働きに見合う給料で、時間のゆとりも十分にある。勤務が5時間減ったのに年収は前の職場とほぼ変わらないという従業員もいます。

 ライフステージに応じて、働く時間も働き方も自由に柔軟に選べるのが本当の「働き方改革」です。佰食屋では出勤と退勤の時間によって基本給を変えています。有給取得率も100%。余裕を持って人を雇うから、急な休みにも対応できて不満も出ません。

 昨夏からは1日50食限定の店「佰食屋1/2」も始めた。

 定年後や子育て中の夫婦でも無理なく働けて、これからの人口減少社会に合うモデルが必要です。そんなに多くの人が店にこなくても1日50食売り切ればいい。夫婦で年収500万〜600万円を目指します。

 人生100年時代、持続可能な「働き方のフランチャイズ」を全国に広げたい。仕事は本来、生活を豊かにするためのものです。誰もが自分の時間を尊重され、幸せな暮らしを諦めなくていいように―。それが私の夢です。自分の人生を丁寧に生きる、ささやかな幸せが日本には不足しているのです。(ラン暁雨)

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