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【この働き方大丈夫!】安心・はかどる子連れ出勤 新型コロナで臨時休校、「在宅」に代わる選択肢

2020/3/20 19:44
昼休みに母親とテーブルを囲む子どもたち(広島市中区のマエダハウジング)

昼休みに母親とテーブルを囲む子どもたち(広島市中区のマエダハウジング)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う臨時休校で、在宅勤務ができない親たちの選択肢として注目されている「子連れ出勤」。「仕事と育児は切り離すべきだ」という考えが根強い日本だが、新しい働き方は浸透するだろうか。どんなメリットがあるのだろう。導入する企業を訪ねた。

 ▽進む育児の理解 求人にもプラス

 昼休み、オフィスの一角に子どもの声が響く。住宅リフォームのマエダハウジング(広島市中区)では臨時休校に入った3日以降、従業員の子ども6人を受け入れた。オフィス上階にあるモデルルームを開放し、宿題やゲームをして過ごしてもらう。親が交代で様子を見て、パソコンを持ち込めば隣で仕事もできる。

 小学生の娘3人を連れて出勤する原田愛子さん(37)は販促企画を担当。社外や自宅でテレワークをするより、出社して同僚と顔を合わせる方が仕事がはかどるという。実家を頼ることもあるが「やりくりできない時の選択肢として子連れができると安心。みんな温かく見守ってくれます」。

 人手不足の中、子育て中の社員が働きやすい環境を整えると、企業にもメリットがある。同社広報の朝枝恭子さん(52)は「家づくりには母親目線が欠かせない。女性社員を大切にすることは、いい人材を確保する近道です」と強調する。

 子どもが職場にいることで育児への理解が深まり、他の社員が「ワークライフバランス」を意識する好機にもなる。子どもたちの反応も上々だ。「働くママはかっこいい」と原田さんの小学5年の長女葵生(あおい)さん(11)は笑う。

 人材サービスのクリエアナブキ広島支店(中区)も人材確保のため、昨夏から託児付きのキッズスペース「ママスクエア」を設けた。未就学児が対象で「子どもと一緒に出退勤できます」との求人が好評だ。

 ガラス越しにわが子の様子を見ながら働き、合間に食事の世話やおむつ替えもできる。2歳の長男を連れた契約社員の門脇円香(まどか)さん(31)は、待機児童が多い自宅近くの保育園に入れなかった。「ここなら預け先がなくても就業を諦めずに済む」と喜ぶ。

 育児と仕事の両立を支援するため、国も子連れ出勤を後押しする考えだ。子育て中の男女の半数以上が「賛成」と回答した民間調査もある。一方で「保育環境が整っていない」「業務に集中できない」「食事の準備や通勤が大変」と消極的な声もある。環境面の課題はあるが、臨時休校のような緊急時にはニーズが高まる。

 お多福グループ(西区)は今月3〜25日、毎日20人前後の小学生を本社近くの施設で受け入れる。会社の持ち味を生かした「食育」などで子どもが退屈しない工夫を凝らす。

 担当者が作った1日の時間割に沿って勉強したり散歩したり。昼食には世話役の社員と一緒に、お好み焼きや焼きそばを作る。居場所の提供だけでなく、親の仕事の魅力が伝わるプラスアルファの効果がある。

 多様な働き方が求められる時代。感染症対策を機に、企業の意識改革も進みそうだ。(ラン暁雨、林淳一郎)

 ■意識変える契機/脱少子化にも道 導入企業の先駆け「モーハウス」(茨城県つくば市) 光畑由佳代表=倉敷市出身

 子連れ出勤は工夫次第でできます。専用スペースの設置や保育士の雇用が必須条件ではありません。新型コロナウイルス対策で、やむを得ず始めて「案外できる」と意識が変わった企業もあるのではないでしょうか。導入が広がるチャンスだと期待しています。

 赤ちゃん同伴の場合、親が抱っこしたり、おんぶしたりして働きます。親といると安心してほとんど泣きません。時々、声が聞こえて「いたんですね」という感じです。

 歩く年齢の子どもがいるときはどうするか。専用スペースを設けるのなら、働きながら目の端で見守れる距離がベストです。社内の会議室などを使うのであれば、親が交代で見る。パソコンを持ち込めば仕事もできます。子どもに勉強させるとか、音が出なくて集中できる遊び道具をそろえておくといいです。

 それでも「気が散る」というスタッフはいます。不満がたまらないよう話し合う場をつくってほしい。会社もコミュニティーの一つです。わが子を知ってもらうことで職場の思いやり度はアップします。子どもの急な発熱で休むときも、嫌な顔をされず仕事のカバーがスムーズになります。

 「子育ては家で」という先入観の見直しから始まります。子どもにとって、仕事が親を奪う「敵」に感じず、働くことへの理解や社会性を育む機会になります。若いスタッフが先輩の子育てに触れ、「私も頑張ろう」という意識が芽生えてくる。子連れ出勤は少子化対策にもつながるメリットがあると考えています。

 もちろん会社のプラスもあります。人手不足の中で出産や子育てで離職しかねない人材をつなぎ留められる。今回の感染症のような緊急時でも、事業を継続できる。会社の「戦略」になり得る働き方として取り組んでほしいと思います。

 ▽モーハウスの取り組み

 光畑さんは次女を出産した1997年にモーハウスを創業。授乳服メーカーでこれまでに子連れ出勤の母親約350人と働いてきた。従業員は現在約40人。うち約10人が2歳までの子どもを連れて授乳服の受注管理やショップでの接客に取り組む。つくば市のホームページに、光畑さんが代表理事を務めるNPO法人と市が作った子連れ出勤リーフレットが載っている。  

この記事の写真

  • 仕事中でもガラス越しに子どもを見守ることができる(中区のクリエアナブキにあるキッズスペース)
  • 「モーハウス」の光畑由佳代表

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