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「旧舞のとびら」たたいてみませんか 広島・府中町の高校1年西江さん、休校中にHP制作

2020/3/21 19:54
タブレットで「旧舞のとびら」を制作する西江さん(広島県府中町)

タブレットで「旧舞のとびら」を制作する西江さん(広島県府中町)

 ▽歌に例えると、森昌子さんや美空ひばりさんのような昭和歌謡…

 「私は悔しい」から始まる神楽の紹介ホームページ(HP)がある。作者は、広島県府中町の県立広島高1年西江亜偉斗さん(16)。神楽は派手な新舞(しんまい)が注目される一方、大好きな旧舞(きゅうまい)に人気がないことを嘆く。そこで新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校の間に、「旧舞のとびら」というタイトルのHP作りにせっせと励む。

 「惜しい」を超えて「悔しい」と表現するほど、西江さんは旧舞への愛が強い。戦前にできたとされる旧舞は、新舞に比べてテンポがゆっくり。新舞のようなスピード感やあでやかさはない。しかし西江さんは「それこそが旧舞の魅力」と力を込める。

 旧舞は、面をかぶった状態で少しうつむいて悲しさを表したり、静と動でめりはりを付けたり。スローな動きの中で感情や雰囲気を表現する。「歌に例えると現代のアイドルグループ『欅(けやき)坂46』が新舞で、旧舞は森昌子さんや美空ひばりさんのような昭和歌謡でしょうか。旧舞は見れば見るほど味わいが出る奥深さがあります」と力説する。

 通っている県立広島高が休校になった2月末、年明けから構想を温めてきたHP作りに着手した。昼夜を問わず勉強の合間を縫ってはタブレット端末に向かう。「旧舞は地味で、見ていて面白くない」という人へのアピールが狙いだ。

 見るだけで飽き足らず、昨年2月、旧舞一筋で演じる広島県安芸太田町の川北神楽団の門をたたいた西江さん。HPには「生で見て感じるべし」とメッセージをつづった。今後は、川北神楽団が演じる旧舞約10演目について、漫画や写真を交えてストーリーや特徴を解説するつもりだ。

 西江さんの神楽愛は胎児の時から育まれてきた。毎週のように各地を回って神楽を見ていた母亜弥さん(37)は「おなかの中では太鼓の音が聞こえると騒ぎだし、めちゃくちゃ元気でした」と振り返る。

 幼い頃から、寝ても覚めても神楽のことばかりを考えてきた。川北神楽団に入団後は、週1、2回、亜弥さんの送迎で安芸太田町へ練習に通う。団長の大倉幸人さん(63)は「熱心で覚えもいい。もうすぐレギュラー入りです」と成長を楽しみにする。

 専門家も、西江さんの挑戦に注目する。NPO法人広島神楽芸術研究所(北広島町)理事の石井誠治さん(71)は「新舞にあこがれる若者が多い中、旧舞の魅力に着目するとは面白く、うれしい」とし「旧舞の良さが広まれば、神楽文化全体の底上げにもなる」と話す。

 西江さんは「神楽は地域の風土や文化によって奏楽も舞い方も違う。比べて優劣を付けるのではなく、旧舞の魅力に気付いてもらうのが目標」と語る。「知識も経験もまだ浅いので、このHPを自分とともに成長させていきたい」(桜井邦彦)

 ■旧舞と新舞

 旧舞は、島根県西部の石見地方から広島県へ伝わったとされる。テンポが比較的緩やかなのが特徴。しかし、連合国軍総司令部(GHQ)による統制下で神国思想が色濃いために禁止された。そんな中、現在の安芸高田市で、演劇性を高め、スピード感あふれる新舞が誕生した。当時は「新作高田舞」と呼ばれた。

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  • 川北神楽団に加入し練習に励む西江さん(広島県安芸太田町)

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