くらし
読者からの質問編 角膜の病気 <回答>JR広島病院眼科 田中文香部長
ダメージを受けると見え方に影響する角膜の病気(4日掲載)について、読者から寄せられた質問にJR広島病院眼科(広島市東区)の田中文香部長に答えてもらった。(衣川圭)
▽内皮細胞減少 視力低下が心配
―細胞500個以下は要注意
Q コンタクトレンズの買い替えのために眼科を受診したとき、角膜内皮細胞減少と言われました。強度近視ですが、内皮細胞が減少してさらに視力が低下する恐れはありますか。検査はどういう頻度ですればいいですか。(広島市南区・会社員女性・27歳)
A 若い人の場合、通常は1ミリ四方に3千個ほどの角膜内皮細胞があります。細胞の減り方が極端でなければ、視力に影響はしません。ただ細胞が500個以下になると、角膜移植の必要な「水疱(すいほう)性角膜症」の恐れが出てきます。角膜に濁りが生じると視力は落ちます。
検査は、病気の影響で細胞減少が急激に進む場合を除き、年1回ほどでいいでしょう。診断された医療機関に相談してください。この検査は白内障の手術前後や水疱性角膜症など病気のときしか保険で検査できません。必要な検査ならば病院負担でする場合もありますが、いきなり検査を頼んでも受けられないことがあるかもしれません。
▽2年前両目手術 左目がかすむ
―視野障害など可能性も
Q 2年前に白内障と緑内障などで両目の手術を受けました。最近左目のかすみがひどくなってきました。仕事などでパソコンを駆使していますが、目に悪いでしょうか。角膜移植はすぐにできるのでしょうか。(松江市・会社員男性・82歳)
A パソコンの使用は角膜内皮細胞減少とは関係ありません。ただ、画面に集中するとまばたきが減って目が乾きやすくなります。目が疲れたなと思ったときは、目を軽く閉じて休憩しましょう。目のかすみが細胞減少によるものかどうかは判断できません。白内障の手術後に水晶体嚢(のう)という場所に濁りが生じる「後発白内障」や、緑内障による視野障害の可能性があります。専門医を受診してください。
角膜には血管が通っていません。このため肝臓や腎臓と違って、移植しても拒絶反応は起こりにくく、適合を調べる必要はありません。国内の献眼による角膜のほかに輸入のものもあります。国内の献眼は足りていませんが、手術まで長期間待つことはありません。
▽円錐角膜 新しい治療法は
―症状で判断 保険適用外
Q 約30年前に円錐(えんすい)角膜と診断されました。20歳の頃、進行が止まったと言われました。昨年、視力の低下が気になって眼科に行くと、円錐角膜の新しい治療法の「角膜クロスリンキング」「角膜内リング」の紹介を受けました。どんな治療ですか。(広島市佐伯区・会社員男性・43歳)
A 円錐角膜とは角膜が薄くなり、前方に突出してくる病気です。眼鏡で矯正できない乱視が現れ、視力が低下します。軽いうちはハードコンタクトレンズで角膜の形状を整える治療をします。通常は20、30代で進行が止まりますが、進行がひどく角膜が濁った場合は移植が必要です。
角膜クロスリンキングは、現在進行しているか、これから進行が予想される円錐角膜の治療法です。ビタミンB2の点眼と紫外線の照射で角膜の強度を高め、進行を止めます。そうなれば、角膜が濁って視力が悪くなる心配がなくなります。治療後10年を超すデータは集まっていませんが、90%以上で進行を止めると言われています。
角膜内リングは症状の軽い人向けです。二つの半円状のリングで角膜を引っ張り、突出部をなだらかにします。眼鏡だけでも視力が矯正しやすくなったり、ハードコンタクトレンズの付け心地がよくなったりすることが期待できます。
これらの治療法は欧州や北米で広く行われていますが、国内では保険適用外で実施医療機関は限られます。二つの治療を一緒にした場合、片目の治療費が40万円を超すこともあります。まず、視力低下の原因をはっきりさせることをお勧めします。
▽白い壁が赤茶色に見える
―緑内障と無関係 受診を
Q 18年前にコンタクトレンズ処方のために眼科を受診した際、右目の神経のへこみが気になると言われました。経過観察していましたが、昨秋の受診で右目内部の視神経の出血が確認されました。2年前から起床時に白い壁を左目で見ると、薄い赤茶色に見えることがあります。受診すべきでしょうか。(呉市・公務員女性・49歳)
A 神経のへこみは「視神経乳頭陥凹(かんおう)拡大」と呼ばれるものでしょう。この見立てがあれば、まずは緑内障を疑います。視神経の出血も緑内障の影響を考えますが、視野に異常がないときには、経過観察になることがあります。
起床時に、白い壁が赤茶色に見えるのは緑内障とは関係ないでしょう。内皮細胞の減少によるかすみでもなさそうです。白内障などほかの病気の影響かもしれません。緑内障も心配ですので医師に相談してください。
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