くらし

【認知症からの贈り物 信友直子】<1>両親の姿、ありのままに

2020/3/31 20:00
信友さん(左)が呉市に帰省した時に母文子さん(中)、父良則さんと写した写真

信友さん(左)が呉市に帰省した時に母文子さん(中)、父良則さんと写した写真

 「ぼけますから、よろしくお願いします。」

 見てくださった方も多いと思います。認知症になった私の母文子(91)と父良則(99)の「ぼけても支え合う暮らし」を、娘の視点からありのままに描いたドキュメンタリー映画です。

 舞台が呉市だったこともあり、広島県では本当にたくさんの方が、ご近所の老夫婦を応援するかのような熱心さで見てくださいました。親御さんやご自身の将来に重ねた方も多いのではないでしょうか。人生100年時代と言われる今、認知症は誰がなってもおかしくない病ですから。

 私は仕事柄ビデオカメラを回す機会が多いので、両親にも20年ほど前から何となく被写体になってもらっていました。ここ数年でウチは、社会問題と言われるキーワードがいくつも重なる家になっていました。

 まず母の「認知症」。超高齢な父による「老老介護」。母に何かあるたびに私が東京と呉を往復する「遠距離介護」。そして、私が東京での仕事を辞めて実家に帰るべきか悩んでいるので「介護離職」…。

 そう気付いたとき、私は撮りためた映像を発表しようと思いました。ウチのようにごく普通に暮らしてきた家族の姿から、こういった社会問題を感じてもらう。そのことで認知症をより身近に自分事として覚悟したり、準備したりしてもらえるのではと思ったからです。

 正直に言えば、親の認知症を公開していいのか悩みもしました。家の恥をさらすことになりはしないか?

 でも今は、公開して本当に良かったと思っています。上映後にお客さんと話すと、悩んでいるのは自分だけじゃないんだという連帯感が湧いてきて、私自身も勇気をもらえるのですから。

 認知症になったからといって、この世の終わりではありません。これからしばらく、母が認知症になったからこそ気付けた大切なもの「認知症がくれた贈り物」について、つづっていきたいと思います。

 のぶとも・なおこ 61年呉市生まれ。東京大卒。製菓会社広告部勤務を経てテレビディレクター。北朝鮮拉致問題や若年性認知症などのドキュメンタリーを手掛けてきた。初監督映画の「ぼけますから、よろしくお願いします。」は18年秋から公開。同名の著書は「第10回広島本大賞」に選ばれた。横浜市在住。

    ◇

 映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」の監督を務めた信友直子さんが、両親にカメラを向け続けて感じたことなどをつづります。

【認知症からの贈り物 信友直子】
<1>両親の姿、ありのままに
<2>母の異変、気付いた電話
<3>母をいたわる父の度量
<4>問診テスト、正解した母
<5>祖母に対する後悔の念
<6>書への情熱くじく異変
<7>父の返しに笑顔戻る母
<8>父と娘 不思議な連帯感
<9>父の強さ優しさを知る
<10>思う存分 父に甘える母
<11>背中かいて「お疲れさん」
<12>「ヒキ」の視点で笑い発見
<母文子さん死去に寄せて> 老いるとは・死にゆくとは…教えてくれた
<13>思わず笑った衝撃映像
<14>父の率直さ、母を安心に
<15>にじむ親心が切なくて
<16>失態恐れ人目を避ける
<17>心の内さらけ出した母
<18>空気和ませた父の返事
<19>教え請う父に心ほぐす
<20>家計簿に残る母の矜持
<21>親心つけ込まれ買い物
<22>「籠城」は母の思いやり
<23>台所の守り、もはや限界
<24>怖くなって寝てばかり
<25>映像発表、すんなり了承
<26>好青年の来訪に沸く家
<27>えっ、河合くんに聞くん?
<28>初めて聞いた父の本音
<29>元気ない父見て罪悪感
<30>背中押してくれた先生
<31>父100歳、涙流し人生語る
<32>丁寧な生活、長寿の秘訣
<33>父は「介護不要」、自信に
<34>おむつに見た夫婦の深淵
<35>ケアマネ小山さん、好相性
<36>「邪魔なんね」不機嫌な母
<37>陽気な母、誕生日に偲ぶ
<38>ヘルパーさん、おだて上手
<39>プロの手腕に母も納得
<40>デイ初日、笑う母に胸熱く
<41>デイ満喫の母に父も「安心」

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