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新型コロナ、感染者が急増したら… 重症者優先、激変する医療
新型コロナウイルスの感染者が急増すると医療体制は大きく変わる。現在、中国5県では感染者全員が入院しているが、感染が拡大すると、各県は「重症者の病床確保」を最優先にする体制に切り替え、軽症者には自宅やホテルで経過観察してもらうという。感染期の医療体制や重症者の治療を紹介する。
<感染期の医療体制> 軽症者は自宅やホテルへ
現在は感染症法に基づき、症状がなくても原則として、感染症の指定医療機関に入院。ウイルス検査で2回陰性が続くまで退院できない。しかし、感染者の接触歴がつかめなくなり、今より患者が増える「感染期」にどうするか。
中国5県は国の方針に従い、肺炎などの症状の重い人に入院ベッドを割り当て、軽症者は自宅で療養して回復を待ってもらうよう対応を変える。軽症の人で病院のベッドが埋まっていると、重症者の治療が遅れかねないからだ。
5県が感染者向けに確保しているベッド数(1日時点)は、広島119床▽山口40床▽岡山117床▽島根200床▽鳥取約260床―で、各県ともさらに増やす方針。広島県健康対策課は「人工呼吸器の必要な患者をどの病院で診るかなど、重症度に応じた病院の役割分担も決め、重症患者の治療が滞らないようにしたい」と説明する。
一方、無症状や軽症の人は原則、入院はできなくなるが、他人に感染させない行動が求められる。各県は、自宅などでの療養と外出自粛を要請する。リスクの高い高齢者や妊婦と同居しているなど、自宅で過ごすのが難しい場合は、自治体の用意するホテルや施設で療養するケースを想定。部屋代や食費はかからない。
<もし感染爆発すると> 入院必要な患者、病床の6分の1 広島県推計
何も対策を取らずに「感染爆発(オーバーシュート)」が起きるとどうなるのか。厚生労働省の算定式によると、何も対策をしない場合は、1日の人工呼吸器の必要な重症者は、広島169人▽山口94人▽岡山116人▽島根46人▽鳥取36人―に上ると推計される。
さらに入院治療の必要な患者数となると、広島県の推計値は5043人に膨らむ。県内の病床数の6分の1に当たる数だ。広島県感染症・疾病管理センターの桑原正雄センター長は「そこまで増やしてはいけない。感染者の治療が行き届かず、ほかの病気の手術などもできなくなり、医療が崩壊する恐れがある」と話す。
<入院治療の内容> 肺炎進めば人工心肺装置
新型コロナウイルス感染症で入院治療が必要となるのは主に、肺炎で呼吸がしにくくなった場合だ。専門家は、高齢者や持病のある人は、肺炎になりやすく、急激に悪化して死に至る場合があると警鐘を鳴らす。
広島大病院救急集中治療科(広島市南区)の志馬伸朗教授によると、比較的軽い症状で自力で呼吸ができるなら、酸素を口から吸って肺に送る「酸素療法」をする。呼吸しにくい重症となると、喉の奥に管を入れて強制的に酸素を肺に送る「人工呼吸器」を用いる。強い圧力で肺の傷みが進んでしまうこともある。
さらに重症になると、タレントの志村けんさんの治療にも活用した「ECMO(エクモ)」という人工心肺装置を使う。体外に取り出した血液に直接、酸素を送り込み、体に戻す。ウイルスを減らしたり、肺の炎症を抑えたりする治療ではないが、肺を休ませて回復を促すことができる。ただ、血液の固まらない薬を同時に使うので、脳出血などのリスクは高まる。
今、イタリアや米国では、人工呼吸器の不足が課題となっている。志馬教授は「日本でも急激に患者が増えれば、呼吸器が不足する恐れがある。使いこなせる医療スタッフが足りなくなる可能性がある」と話す。
「患者を急激に増やさないためには、市民の行動が鍵を握る」と志馬教授。「不便かもしれないが、換気の悪い密閉空間に密集するなど、リスクの高い環境を避けてほしい」と呼び掛ける。(衣川圭)
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