くらし

【この働き方大丈夫?】第3部 テレワークのうねり<1>コミュニケーションに難あり

2020/5/26 20:10
イラスト・大友勇人

イラスト・大友勇人

 在宅勤務などの「テレワーク」を、新型コロナウイルス対策として導入する企業が急速に増えています。柔軟な働き方として注目される一方、準備も整わない中での半ば強制的なスタートに戸惑いや悩みもあるようです。「テレワーク元年」に実践者の声を聞きました。

 ▽仕事が自己完結できない若手には不向き。表情も見えない 広島市の会社員男性(26)

 ■入社3年目。サービス業。4月の異動で担当業務が変わったばかり。

 テレワークになると聞いてまず思ったのは「家で仕事できてラッキー」。出勤しなくていいのが新鮮でした。でも2カ月やって感じたのはコミュニケーションの難しさ。仕事を自己完結できない僕ら若手には不向きなのかなあ。

 しかも異動直後で業務にも不慣れで、分からないことだらけです。職場なら隣席の先輩や上司に気軽に相談できるのに、電話だとうまく伝えられないんですよ。「今連絡したら迷惑かな」と遠慮するし、「あーはいはい」と早口で言われると、急いで切り上げなくちゃと焦ります。

 メールでもやきもきします。返信が遅いと「気分を損ねる表現があったかな」と余計なことを考えてしまって。気付けば1日に何度も受信箱をクリック。待ち時間は作業が止まるから効率も悪い。せめて絵文字が使えるようになればいいな。文末にお願いマークやにっこりマークがあると、印象が全然違いますよね。

 密な連絡が取れないと、仕事上の方針の違いや誤解が生じそうで不安です。相手の表情が見えないのがこんなに不便とは思わなかった。うちの社は安全上の理由でウェブ会議をやっていないから余計、顔と顔を合わせるのが難しい。先日は他部署の人が「久しぶりに出勤したら『ついでの打ち合わせ』が増えた」と愚痴っていました。結局、対面のコミュニケーションに頼っているんですよ。

 ハード面の整備も遅れています。パソコンは会社からの貸与ですが、プリンターがないのが地味に困ります。資料画面をいくつも開いて企画書を作るから、目が疲れて視力が落ちそう。紙で刷り出せたら楽なのに。残業は禁止ですが、仕事が進まず、私用のパソコンで夜こっそり仕事する人もいますよ。

 生活リズムも乱れますね。ついつい夜更かししたり寝過ごしたり。始業の直前に跳び起きてパジャマで仕事したことが何度もあります。でも自分で仕事をコントロールできる人にはいいと思う。古くさいけど、僕はネクタイを締めて髪をセットするのがやる気スイッチ。正直、早く出社したいです。

 ▽めっきり減った「雑談タイム」。 学ぶ場が失われる気がする 広島市中区の工事会社副社長女性(65)

 ■社員15人のほぼ全員が在宅勤務やリモートワーク。

 小さな会社ですが、コロナの感染者を出して仕事をストップさせたら信用は丸つぶれ。社内の「3密」を防ぐため、今月初めから工事現場に行く作業員は出社しない直行直帰のリモートワークにしました。現場監督は在宅勤務。最適のパソコンやスマホ選びに1カ月かかりました。ところが、心配なことが…。雑談がめっきり減ったんです。

 これまで、夕方になるとあちこちの現場から作業員が会社に戻り、やがて「雑談タイム」が始まっていました。仕事でうまくいったこと、失敗談…。ざっくばらんな会話に職人として腕を上げるヒントがある。それがなくなると、自然と学ぶ場が失われるような気がして…。

 みんなテレワークに悪戦苦闘しています。在宅の現場監督たちは「台所の机での仕事はしんどい」「休校中の子どもがいて集中できん」とぼやいて。実は私もです。2歳の孫にまとわり付かれて、電話一本かけるのも大変ですから。

 とはいえ、スマホの機能を使えば、どこからでも大量の現場写真や図面を送信できる。メモリーカードに入れ、わざわざ会社まで来て受け渡す必要がなくなりました。手書きだった作業日報も、現場でスマホに入力してぱっと送れる。慣れたら仕事の効率が上がるはず。業績アップにつなげて社員の給与に反映させたい思いもあります。

 特に気掛かりなのは、今春迎えた2人の新入社員です。コロナの影響で歓迎会は中止。恒例の納涼会なども未定です。じかに会って話し、家族のような付き合いを重ねるうち、ベテランも若手も打ち解ける。ささいな相談もしやすくなります。そんな関係が「いい仕事」につながるんです。

 テレワークは続けます。ただ、互いが見えにくい働き方。それでも一人一人が自立して仕事をきっちりこなし、プロの技と意識を磨けるかどうか。経営に携わる私も試行錯誤のさなかです。

 ▽「部屋見せてよ」にぞっと。「リモハラ」で上がる不快指数 広島市の会社員女性(29)

 ■IT関連企業勤務。3月からテレワーク中。

 1カ月ほど前から、在宅勤務中の嫌がらせ「リモートハラスメント」に悩んでいます。

 若い社員が多いフランクな社風で、週1回は数人のチームでウェブ会議をしています。一段落すると雑談が始まるんですが、必ずある40代の先輩男性が冗談ぽく絡んでくる。「少し太ったんじゃない」「化粧してるの?」…。女性が少ないので私がネタになりやすいのでしょうが、無神経ですよね。これも給料分と適当にあしらっていましたが、「部屋見せてよ」と言われたときはぞっとしました。

 カメラ越しに私生活が見えて、興味がわくんですかね。でも公私の境界がなくなるのはどうかと思う。大勢の目があるオフィスと違って、ウェブ上では気安くなるのかな。コミュニケーションを履き違えていると思います。

 先日も「独身だと心細いでしょ。もしコロナに感染したら看病してくれる人はいるの?」と聞かれて。本当に大きなお世話。パソコンを閉じたくなります。

 オンライン飲み会の誘いもストレスです。「お酒弱いんで」とやんわり断っても「自宅だから酔っても大丈夫でしょ。ノンアルコールでいいから付き合ってよ」としつこい。在宅で暇なんでしょうね。テレワーク自体は気に入っているのに、想定外の出来事に不快指数が上がってます。

 ▽テレワーク実施率は27% 民間調査

 新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、テレワークはどれほど広がったのだろう。民間のパーソル総合研究所(東京)が働く約2万5千人に尋ねたインターネット調査によると、全国のテレワーク実施率は4月半ばで27・9%。3月半ばの13・2%から2倍余り伸びた。

 中国5県では、広島と岡山が同率の8・2%で全国37位。山口は4・7%(47位)にとどまり、島根11・0%(29位)、鳥取13・1%(25位)だった。実施率を押し上げたのは、4月7日に先駆けて緊急事態宣言の対象エリアになった首都圏などだ。1位の東京は49・1%に達し、続く神奈川と千葉、埼玉、大阪でトップ5を占める。

 調査では、テレワーク中の人の受け止めも聞いた。不安の1位は「非対面のやりとりは相手の気持ちが分かりにくい」で37・4%が回答。課題は「運動不足を感じる」が73・6%で最も多かった。(ラン暁雨、林淳一郎)

    ◇

 いきなり始まった在宅勤務。互いの表情が見えないため、コミュニケーションが難しいと感じる人が多いようです。皆さんはどうでしょうか。解決のためのアイデアがありますか。体験談や連載へのご意見、ご感想をお寄せください。匿名希望の場合も連絡先をお知らせください。

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