くらし

絵本で充電、大人こそ 中国地方で囲む会や専門図書館

2020/7/17 20:39
大人が持ち寄ったお薦め絵本を紹介しあう夜会(倉敷市の「つづきの絵本屋」)

大人が持ち寄ったお薦め絵本を紹介しあう夜会(倉敷市の「つづきの絵本屋」)

 大人になって手に取る絵本は、子どもや孫のためのものが多い。でも、それでは「もったいない」との声がある。大人だからこそ味わえる楽しみがあるからだ。中国地方には、大人だけで絵本を囲む会や大人に来館を呼び掛ける絵本図書館が登場した。自分のために表紙をめくってみませんか。

 ▽読むたびに発見、心もほぐす

 午後7時、倉敷市にある絵本店「つづきの絵本屋」で、大人の男女9人がテーブルを囲む。持ち寄ったお気に入りの絵本の魅力を語る夜会の始まりだ。

 イラストレーター白鷺(しらさぎ)伸一郎さん(46)=倉敷市=は、「ながーい5ふん みじかい5ふん」(光村教育図書)を取り出した。時間の感じ方は場合によって違うことをユーモアを込めて描く作品で「5分間にとことんこだわる作者が面白くて大好き」と熱弁した。参加者は、世界の素晴らしさや謎を伝える「ほら、ここにいるよ」(ほるぷ出版)や、少年の友情を描いた「やめろ、スカタン!」(小学館)などを次々に取り出し、好きな点を思い入れたっぷりに語った。

 常連の団体職員高藤佳明さん(59)=岡山県吉備中央町=は「『人生を支えてくれている何か』や『人として持っておいた方がいい気持ち』に気付かされて、気分がリフレッシュする」と話す。

 夜会を主宰するのは、絵本店代表の都築照代さん。大人は普段、親や祖父母という立場から、子どもの教育のために絵本を手にしがちだが「絵本が好き、と伸び伸び語ってうなずき合う時間がつくりたい」と企画した。2018年5月から原則月1回開いている。

 都築さんは、大人は子どもよりも絵本を深く多様的に味わう力があるという。「一冊の絵本を、その時々の気持ちに引き寄せて読み取れる。だから同じ絵本から、何度でも新しい発見をすることができる」と話す。そぎ落とされた文章や絵から、胸の奥にしまい込んでいた喜びや悲しみが呼び起こされることもあり「感情が生き生きしてきます」。

 絵本がくれるパワーも魅力だ。子どもを読者として想定しているので、最後に希望を語り、「人生は生きるに値する」というメッセージを送ってくれる作品が多い。「気力が落ちたときに助けてもらえることが多いですよ」と絵本の世界に誘う。

 広島市西区の絵本図書館「かたつむりの家」の館長で児童文学者の三浦精子さん(84)=佐伯区=も「大人にこそ絵本を読んでほしい」と願う。

 かたつむりの家は昨年8月、社会福祉法人が保育園の敷地内にオープンさせた。いつもは保育園児たちが楽しんでいるが、木、金、土曜日の午後1〜3時は、誰でも入館できて、本も借りられる。

 三浦さんは60年間にわたって絵本を集めてきた経験から、絵本が決して子どもだけを対象にしていないのに、大人が自分のためにあまり手に取らないことを惜しむ。

 「絵本の絵は、絵描きが自分の世界観や思想を強烈に閉じ込めたアート。大人は自分の考えに凝り固まりがちですが、それだけに、アートがどんと大きく踏み込んでくると心に響く」と話す。

 図書館には三浦さんが厳選した千冊が並び、今後も増やしていくという。三浦さんは「大人こそ心がしなびて死んでしまわないように、絵本をどんどん借りて『すてき』『面白い』という感情を積み重ねてほしい」と願っている。(治徳貴子)

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  • つづきの絵本屋の夜会で参加者が紹介した作品
  • 「かたつむりの家」で読み聞かせをする館長の三浦さん(左端)
  • 「かたつむりの家」の外観。カタツムリの殻の丸みを表現している(広島市西区)

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

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