くらし

学びながら働く 課題は勉強時間の確保

2020/7/31
「夢の職業に就くチャンスをもらえてうれしい」と話す三浦さん(東広島市の広島国際大)

「夢の職業に就くチャンスをもらえてうれしい」と話す三浦さん(東広島市の広島国際大)

 ▽大学と職場 学生支援で連携も

 「学びながら働く」ことへのニーズが高まっている。親からの経済的な支えを得られず、進学や進級を諦める若者が少なくないからだ。大学の夜間コースなどもあるが、学ぶ時間を確保するための働き方改革が伴わないと長続きしない現実がある。そんな中、広島国際大(東広島市)が介護現場と連携した新たな試みを始めるなど模索が続く。

 「夢をかなえる可能性が『ゼロ』から『あり』になったのは大きい」。今春、広島国際大に入学した三浦瑛奈さん(20)は笑顔で語る。

 経済的な理由で進学を諦め、高校卒業後は地元の益田市の介護施設にいったん就職した。しかし、高校の先生になりたいという夢が捨てられない。教員免許が取れる広島国際大医療福祉学科では、介護現場で働きながら学べると知り、門をたたいた。

 三浦さんを受け入れたのは、同大が今年4月からスタートした「まな・はたプロジェクト」。連携する広島常光福祉会(広島市東区)に採用された学生が対象だ。三浦さんは大学で週3日学び、安芸区の高齢者施設で週3、4日働く。月18万円の給料を生活費に、月8万円の奨学金を学費に充てる。「自分で稼ぎながら、親に頼らずに大学に通えるのは本当にありがたい」と喜ぶ。

 キャリアの面でも手応えを感じている。大学で高齢者支援の理論を学んですぐ、施設で排せつや食事の介助を実践する。「教科書にはない気付きが得られる。将来は高校で利用者との関わりを大切にした福祉を教えたい」と目を輝かせる。

 「まな・はた」を立ち上げた岡本晴美教授は、親の経済状況の悪化で中途退学した学生を何人も見てきた。「働きながら学ぶという選択肢が介護現場の協力を得て実現した。学んだ人が介護現場に残れば、人材不足への歯止めにもなる」と期待する。

 三浦さんに限らず、学生を取り巻く環境は厳しい。日本学生支援機構によると、機構から奨学金を借りた学生は、2018年度までの20年で2・1倍の127万6千人に増えた。新型コロナウイルスの感染拡大が経済に打撃を与え、状況はさらに悪化。今年4月に学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」が学生1200人に行った調査では、家計を支える人の収入が「減った」「なくなった」と答えた人が半数を占めた。

 一方で、働きながら学ぶ仕組みの整備はいまだ不十分だ。大学の夜間コースや、卒業までの期限を延長してゆっくり少しずつ学ぶ「長期履修制度」があるが、職場での長時間労働がはびこる中で、学ぶ時間を確保するのは簡単ではない。

 大学教育に詳しい広島大高等教育研究開発センター(東広島市)の小林信一センター長は、「企業や事業所の側が、学ぶ環境を守るための働き方改革を進める必要がある」と指摘する。ドイツでは平日にも学ぶ日を設ける仕組みがあることに触れ「学びへの投資は、企業や事業所にとって高いスキルの人材育成につながる。意欲のある若者をサポートするべきだ」と力を込める。(標葉知美)

 ▽「まな・はた」希望の学生募集 広島国際大

 広島国際大は来年度も医療福祉学科の「まな・はたプロジェクト」を利用する学生を募集する。4年間の授業料で最長8年間学べる「長期履修制度」を活用し、連携する広島常光福祉会の高齢者施設で働きながら学べる。年齢制限はない。試験は、同大は9月から来年3月にかけて、広島常光福祉会は10、11月に実施。双方の合格が必要。高校3年生は22日に東広島市の東広島キャンパスである大学見学会で担当者が相談に応じる。19日までに同大ホームページから申し込む。同大入試センターTel0823(70)4500。

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  • グラフィック・本井克典
  • 「大学も学びながら働くための支援を考える時期に来ている」と力を込める小林センター長

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