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【この働き方大丈夫?】第4部「パワハラが怖い」に反響<下>防止策は

2020/8/10
イラスト・大友勇人

イラスト・大友勇人

 働き手の尊厳を傷つけるパワハラを防ぐにはどうすればいいのだろう。自らの経験を踏まえて、防止策や人材育成に関する提言を寄せた読者もいた。

 ▽言い方次第で素直に/ゆとりない職場が背景

 「恐怖支配ではなく、尊敬される上司になることが部下の成長を促すのではないでしょうか」と投げ掛けるのは呉市のパート女性(38)。結婚前に勤めた医療機関の院長は激高型だった。職員の頭をはたき、誰かの失敗を全員の前でやり玉に挙げる。恥をかかせて反省を促すタイプで職場は萎縮していた。「失敗を引きずりやすい私には、やる気をそぐ行為でしかなかった。一対一で注意されたい人もいるのに育成が下手」と振り返る。

 逆にある勤務医から注意されたときは素直に反省できた。一方的に責めるのではなく、ミスの理由を聞き「僕の指示も悪かった」「次はこうしよう」という一言を加える。言い方次第でこうも違うのかと驚いた。「先生に認められるようスキルアップしたい」と前向きになれたという。

 「職場のゆとりが失われたことがパワハラの背景」とみるのは岩国市の会社員男性(42)。景気低迷や働き方改革で、効率と成果がシビアに求められる。人間関係もぎすぎすし「後輩育成にじっくり時間をかける余裕がない」と打ち明ける。「働き方そのものを見直さないと、対症療法では根本的な解決になりません」

 呉市の製造業男性(43)は仕事選びの大切さを訴える。転職活動では「自分の性格や理想の働き方に合うかどうか」を基準に企業を探した。厳しいノルマや売り上げ目標がある職種は向いていないと自覚している。ノルマはパワハラにつながりやすく、知人の営業マンは高い年収と引き換えに「胃に穴が開きそう」と漏らしていた。

 今の仕事は納期はあるがチーム作業が主で、個々の負担は大きくない。給料の高さより家族との時間を大切にしたいという希望がかない、人間関係も良好だ。「将来的なビジョンが描けない仕事を避けることが自衛にもなる」と強調する。

 すぐに実践できそうなアイデアもあった。広島市中区の団体職員男性(52)の職場では、年齢や役職に関係なく「さん」付けで呼び合う。部下を呼び捨てにすると注意するときも命令口調や乱暴な言葉遣いになりがちだが、「さん」と呼び掛けると不思議と丁寧語で冷静に話せるという。

 飲み会では「仕事の話は禁止」。趣味やグルメ、芸能ネタで盛り上がる。「楽しい時間を共有し、仕事以外の人間的な魅力を互いに知ることこそがコミュニケーション」と言い切る。「『俺たちの頃は我慢していた』『今の若手はドライで困る』なんて言わず、嫌だったことは自分たちの代で断ち切ればいいのです」

 ▽「互いの話聞き、原因探ろう」 産業カウンセラーの保田厚子さん=広島市

 パワハラ相談では「上司の加害」と考えられるケースだけでなく、「部下が過敏に反応しすぎている」ケースもあるという。広島市中区で中小企業の社員向けの相談室を開く産業カウンセラーの保田厚子さん(48)は、問題解決には、まずパワハラの原因を探ることが大切と強調する。

 パワハラは加害者と被害者のどちらもが、原因を自覚していない場合がほとんどです。互いの話を聞いて原因を探り、一つずつ表面化させる作業をします。

 例えば、パワハラは「加害者の人間性の問題」と思われがちですが、加害者の私生活のストレスが背景にあるケースが意外と多い。家族関係や金銭問題といった悩み・不安が、職場での怒りを増長させます。

 健康問題も一因です。睡眠障害や体の痛み、栄養の偏りによってホルモンバランスが乱れると、感情を制御できない状態になる。体調不良はメンタルに影響し、攻撃的になります。その場合は生活習慣や食生活の改善を促します。

 部下の方も「耐性」が低くなっている。過度に打たれ弱かったり、自信がありすぎたり。パワハラ被害を頻繁に訴える人の話を聞くと「あなたにも原因があるよね」と感じることが少なくありません。被害者に発達障害があり、その対応が不適切なために問題がこじれるケースも目立ちます。上司の理解を得るためにも、個別の事情を可能な限り伝えましょう。

 見過ごしているパワハラの原因に気付くためには、社外の専門家に相談するとスムーズです。社内で解決しようとすると利害関係や企業文化が邪魔し、本当にパワハラがあったのか判断が難しい。当事者だけでなく周囲の同僚にも必ず聞き取り、客観的な意見を得ることが大切です。(ラン暁雨)

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  • 保田厚子さん

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