くらし

がん患者に寄り添う言葉 広島ゆかりの花木さん、冊子執筆

2020/8/11

 2人に1人ががんになる時代でも、身近ながん患者にどう声を掛けていいか戸惑う人は多いのではないだろうか。一般社団法人がんチャレンジャー(千葉)が刊行した無料の冊子「がん罹患(りかん)者にかかわる方必携『寄り添い方』ハンドブック」は、患者としてうれしかった関わりや、残念に思った声掛けを紹介している。悪気はなくても受け入れられない―。そんな言葉もある。

 ▽立場を思う声掛けうれしかった/自分の主張、押し付けないで

 冊子は、広島市西区で中学校生活を送り、3年前に喉のがんを告知された代表理事の花木裕介さん(41)=千葉県柏市=が、経験を基に執筆した。花木さんは「周りの寄り添いや応援で治療や人生に前向きになれた。でも中には、弱っているときにはしんどい声の掛け方もあった」と言う。

 花木さんは、病気を打ち明けたときに、しつこく自分の主張を押し付ける人への対応に苦しんだという。「絶対これを使うべきだ。多くの人がこれで治っている」「会って詳しく説明したい」…。患者の状況を考えず「正しさ」だけを振りかざされると、土足で踏み込まれているように感じた。

 うれしかったのは「自分にできることがあるようなら、いつでも声を掛けてきてほしい」という言葉だった。相手の立場を思い、適度な距離感を保ってくれるのはありがたかった。

 つらい治療をやりきる力になったのは、奮起を促す声掛けではなかった。放射線治療が苦しくてやめたくなったとき、妻は「どうしてもつらいときは先生に一緒に言いにいこう」と言ってくれた。気持ちに寄り添う言葉を掛けられたとき「逆に頑張らなきゃな」と思ったという。

 冊子には、がんになった人と周りの人のコミュニケーションの気付きが、ふんだんに盛り込まれている。

 例えば、落ち込んでいるから「何とか励まさないと」というのは、時には逆効果になりかねないということ。「頑張ろうよ」「大丈夫だから」「弱気になるな」といった声掛けは、「こんな弱気な自分が悪いのかな」と自分を責めてしまうこともある。

 反対に「無理しないで」という言葉が気に障ることもある。がんを患った後でもできることは自分でやりたいし、なんでもかんでも助けてもらうのは忍びない。本人の気持ちを聞かずに「何かがあったら大変」と決め付けるのはできれば避けたい。

 ほかにも、過去のことや病気の原因について言われるとつらい▽なるべくいつも通り接してくれるのが一番ありがたい―などと紹介している。花木さんは「どんな関わりを求めているか、どのように生きていきたいのかという本人の意思をまずは尊重してほしい」とアドバイスする。

 冊子に体験談を寄せた広島大職員の柳田真由美さん(55)=安佐南区=は、43歳で乳がんを告知された。「『仕事は続けられないかもしれないね』という医師の言葉が重くのしかかった」と記す。

 がんと打ち明けたときに周りの人の接し方が変わるのもつらかったという。「今思えば、どう声を掛けていいか分からなかったのだと思う。がんに関わる人全員にこの冊子を読んでもらいたい」と勧める。

 A5判、66ページ。5月に3千部を作成した。在庫のある限り、企業や団体に最多10部まで無料配布する。個人にはメールでPDFファイルを送る。「がんチャレンジャー」のウェブサイトから申し込む。(衣川圭)

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  • 「同じ言葉でもがんになった人の受け取り方はさまざま。気持ちを尊重するところから始めてほしい」と話す花木さん(本人提供)
  • 「『なんでがんになったの』と言われると責められている感じがした」と打ち明ける柳田さん(広島市南区)
  • 一般社団法人がんチャレンジャーが刊行した「がん罹患者にかかわる方必携『寄り添い方』ハンドブック」

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