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肝硬変の治療薬、開発目指す 広島大の横崎教授ら、製薬会社とタッグ

2020/8/11 21:12
「肝硬変の治療薬は世界の製薬会社が実用化を狙っている」と話す横崎教授

「肝硬変の治療薬は世界の製薬会社が実用化を狙っている」と話す横崎教授

 広島大の横崎恭之教授たちが肝硬変や肺線維症の治療薬を開発している。免疫の働きを利用し、臓器を硬くする「線維化」の原因物質の暴走を食い止める仕組みを応用する。肝硬変は根本的な治療薬がなく、患者と予備群は国内で500万人、世界で3億人に上るとされる。武田薬品工業と組んで巨大な創薬市場に挑む。

 ▽免疫を利用、線維化が改善

 横崎教授によると、肝硬変は、正常な組織が壊れて線維化が進み、表面がでこぼこで硬いゴムのようになった状態をいう。悪化すると肝不全や肝臓がんに発展する。これまではB型肝炎やC型肝炎が肝硬変に進む例が多かったが、今後は食べ過ぎなどによる脂肪肝から肝硬変になる人が急増すると見込まれる。

 横崎教授たちが注目するのは細胞表面にあるインテグリンという物質だ。そのうち線維化に関係する「黒幕」の2種類を、既に突き止めている。この黒幕のインテグリンにくっついて暴走を止める抗体も、広島大が得意とするニワトリを用いた手法で作成した。マウスの肝臓では線維化を改善する効果を確認できた。

 ことし6月には、武田薬品工業との共同研究講座を設置した。今後は、人に投与した時に、体内で効果的にインテグリンの暴走を止められるよう、抗体の構造を少しずつ変える試行を繰り返す。適切な投与量や、副作用についても調べる。2年以内に臨床試験へ進めるよう研究を加速する。

 呼吸器内科医として肺線維症を診てきた横崎教授。溺れるような息苦しさを訴える患者を助けたいと、線維化の仕組みの解明と治療法の開発に力を注いできた。「治療薬のない病気に対する医師の無力さを実感してきた。多くの人を救う薬を作り上げたい」と意気込む。

 大阪国際がんセンターの松浦成昭総長は「インテグリンの働きを阻害する手法は、根本的な治療だけでなく、リスクの高い人の予防手段になる可能性もある」と期待する。

 免疫の働きを利用する治療薬は、世界の新薬開発の主流になっている。がん治療に使うオプジーボや、潰瘍性大腸炎の治療薬エンタイビオなどがある。肝硬変をターゲットにした抗体医薬品の開発は、世界の大学や製薬会社がしのぎを削っている。(衣川圭)

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  • グラフィック・大友勇人

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