くらし
合唱団、コロナ対策手探り 声重ねる難しさに戸惑い
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、合唱団が「新しい歌い方」を手探りしている。集まって声を合わせることが感染を広げるリスクになり得るからだ。広島県内の団体も、飛沫(ひまつ)を飛ばさないためのグッズを手作りしたり、オンラインでつながって声を合わせたり。試行錯誤を続けている。
▽広島でもついたて/特製マスク/オンライン練習
真夏の夜、ピアノ演奏に合わせて滑らかな声が重なる。約25人が所属し、広島市西区の会場を拠点に平和をテーマに歌う広島合唱団。これまでと違うのは、指揮者と団員の間に、大きな透明のついたてがあることだ。歌うときに飛沫が広がるのを防ぐため、団員の男性がテーブルクロスで手作りした。
新型コロナの感染防止策はこれだけではない。歌う時に必須のマスクにも工夫を凝らす。市販品は息を大きく吸うと口に張り付くため、顎の部分が緩く歌いやすい布マスクを団員の女性が手作りした。「3密」防止や、換気なども徹底。団員は前後左右の人と約1・5〜2メートル離れた位置に座る。
新しい練習になじむのは並大抵ではない。団長の寺本美和子さん(61)=南区=は「マスクをして離れていると互いの声が聞こえにくい。自分の声量やタイミングを自然に調節するのが難しい」と嘆く。指揮者の高田龍治さん(68)=安芸区=は、団員の口の開け方を見て誰が間違えているかに気付いてきたが「マスク姿が並ぶ今は誰がどう間違えているのかが分からない」と戸惑う。
オンライン練習に切り替えた合唱団も苦労している。広島大の学生約20人で構成する広島大合唱団は、学内で週2日行ってきた対面練習を4月から休止。ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使った活動を取り入れた。
週1日3時間、団員はそれぞれの自宅からパソコン画面上に集まる。だが、いざ一斉に歌い始めると音が割れたり、途切れたり。いまは代表1人の声だけ流し、メンバーは代表に合わせて各自レッスンする。
ただ、自分の音程のずれに自らは気付きにくい。練習責任者の3年生安本拡史さん(20)は「声を重ねるという合唱の醍醐味(だいごみ)を体験できない。みんな孤独です」と悔しがる。
各地の合唱団は春以降、感染を強く警戒してきた。3月、岐阜県の二つの合唱団で新型コロナのクラスター(感染者集団)が発生。4月には全日本合唱連盟が「合唱活動そのものが感染を引き起こしてしまう可能性は否定できない」と練習をやめるように呼び掛けた。
広島県内の合唱団も練習を控え、コンクールやコンサートも中止や延期に追い込まれた。緊急事態宣言が全面解除後の6月ごろからようやく、練習を再開する動きが出ている。同連盟が出した感染症拡大防止ガイドラインの「団員は向かい合わない」「連続した練習は30分以内」などを参考に対策を講じている。
広島県合唱連盟の福原泰弘理事長(59)=東区=は、いまは「歌う」よりも「聴く」ことで、合唱の幅を広げる時期にしてはどうかと提案する。「平時の練習は取り組んでいる曲や、目指す大会だけに集中して視野が狭くなりがち。創造的に歌うには惜しくもある」と話す。「これまで聴かなかったタイプの曲やほかの豊かな合唱を聴いて吸収してほしい。のびのび歌えるようになったとき、きっと生きるはずです」(治徳貴子)
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